落ちこぼれ魔女・火花の魔法改革!〜孤独なマーメイドと海の秘宝〜
第4話
「はいはい、みなさん。注目してください!」
ハウル先生がぱん、と手を叩いた。
「これからみなさんに回ってもらう星の原石は、もちろんここにいる人数の全員ぶんがあるわけではありませんので、早い者勝ちです」
「えぇ~」
「早い者勝ちかぁ」
「全力でやらなくてもいいんじゃないかしら……」
「そうね? 別に星の欠片はお父様たちに買ってもらえばいいのだものね」
途端にみんなのやる気が削げていく。
さすが、お嬢様。
まぁ、そうなるよね。この学校に通ってる生徒たちは基本みんなお金持ちだから、タダって言葉に引かれる子は少ないんだ。
「あ、言い忘れてました。星の原石を持って帰ってきた生徒には、星の原石以外にもとっておきのご褒美が用意してありますよ」
「えっ!?」
「ご褒美!?」
「まぁ!」
みんなの顔色が変わった。
「ご褒美ってなにかしら?」
「もしかして、宝石とか?」
「私、ダイヤが欲しいわ」
「私はトルマリン! 新しいブローチにしたいの」
わぁ~お。
さすが、発想がみんなブルジョワですこと。
「うわぁ。急にみんな殺気立ったね……」
クラスメイトたちはご褒美という言葉にキャッキャと盛り上がっている。
でも、私は。
「宝石かぁ……」
うーんと考える。
あまり興味はないけど、宝石ってたしか、とっても価値があるんだよね。……あ、待てよ。
「ねぇドロシー。宝石って、魔法石屋に売ったらどのくらい?」
ドロシーにこそっと聞いてみる。
「え? えっと……一番安い宝石でも六千ベリルはいくんじゃないかな?」
ろ、六千ベリル……!!
なんてこった!!
瞳がお金にちゃりんと変わる。
「これは、私たちも負けるわけにいかないねっ!!」
「って、火花ちゃん、もしかしてご褒美売るつもりの!?」
「そりゃそうよ! だって、タダの石が六千ベリルに変身しちゃうんだよ!」
「それはそうだけど……」
授業開始のチャイムが鳴る。と同時に、みんな我先にとほうきにまたがる。
「さぁみんな、頑張っていってらっしゃい!」
ハウル先生の号令を皮切りに、みんな散り散りに空の彼方へ消えていく。
「あっ! しまった、出遅れたっ! ドロシー!」
「わわっ、待って、火花ちゃんっ」
慌ててほうきにまたがって空に浮かぶと、地上からノアくんが声をかけてきた。
「火花! 火花はどこの星の原石狙いなんだ?」
隣には、ノアくんとペアを組むことになったダリアン・ベイカーがいる。
うわ、ノアくん、ダリアンとペアになったんだ。かわいそ。
「いやいやなに言ってるんだい、ノアくんや」
「いや、誰だよ」
「ライバルには教えまっせん!」
「ライバルってお前な」
「あら。私たちをライバルだなんて笑っちゃうわ。ね、ノアくん?」
「ダリアン……」
ノアくんのペアであるダリアンは、馴れ馴れしくノアくんの腕に絡みつきながら、私を嫌味な顔で見下ろしている。
出た。
ダリアンは魔界総理大臣、アルデバラン・ベイカーの一人娘。
縦巻きツインテールで紫色の瞳をした女の子。
ダリアンは高飛車でわがままでプライドが超高い。いつも私を見下してバカにしてくるの。私のことが嫌いなら関わってこなきゃいいのに、なんでかよく絡んでくるんだよね。
まぁ、他の子みたいに陰でこそこそ悪口とかじゃなくて、面と向かってはっきり言ってくるからいいんだけどさ。
「まったく、相変わらずバカな子。学年首席のノアくんと次席の私にかなうわけないのにねっ!」
むぅ……。
く、悔しい!
面と向かって言われると、それはそれで逆に腹立つ。
「そんなの、やってみなきゃ分からないでしょっ!」
「そ……そそ……そうだよ……」
「ドロシーってば声が小さいっ! そんなんじゃ負けちゃうよっ!」
「オーホホホッ!! 聞こえないわよ? なにかしら、空気ちゃん?」
「ちょっとっ! ドロシーにはドロシーって名前があるのっ! 変な呼び方しないでよ!」
「……ダリアン。ドロシーは俺の友達だ。侮辱するな」
さすがのノアくんも、今のは許せないようだ。そりゃそうだよ、空気だなんて!
「あら、それはごめんなさいね」
しかしダリアンは悪びれもせず、けろりとしている。
軽いなっ!! てか心臓鋼かって!!
「残念だけれど、実技は魔力の大きさがものをいうのよ。みんながいくら頑張ろうと、私とノアくんが組んだが最後! ご褒美をもらおうと頑張ったって無駄よ? ご褒美をもらうのは私とノアくんなんだからっ! オーホホホ」
ダリアンは肩を揺らして高らかに笑っている。
くぅっ……!!
めちゃくちゃカチンときたもんね!
「いいもんいいもん! 私、ダリアンとノアくんにだけはぜぇったい負けないんだからっ!!」
ダリアンを睨みつけると、ものすごい眉間に皺を寄せて睨み返された。
ぐ……ま、負けないもんね!
「べーっ!」
誰になにを言われてもドロシーはドロシーだし、私は負けない!
「星の原石はあげないよっ!」
「それはいいけど、お前らふたりじゃ危ないだろ。四人で一緒に行ったほうが効率がいい」
「え~横取りされそう」
主にダリアンに。
「しねぇよ!」
「本当かなぁ」
ダリアンは黙ってあっちのほうを向いている。
「お前な……」
ノアくんの額に青筋が見え始める。
おっと、これはまずい気がする……。
このままだとぐだぐだといつものお説教が始まりそうだったので、私は早々に逃げ出すことにした。
「さぁてドロシー。そろそろ行こうかね!」
「えっ? わぁっ!」
ドロシーの手を掴んで、ほうきで飛び立つ。
「さっ、星の原石を見つける冒険にしゅっぱ~つっ!」
「だから待てって言ってんだろっ! このアホ!!」
バカの次はアホ!?
「私はバカでもアホでもな~いっ!!」
ハウル先生がぱん、と手を叩いた。
「これからみなさんに回ってもらう星の原石は、もちろんここにいる人数の全員ぶんがあるわけではありませんので、早い者勝ちです」
「えぇ~」
「早い者勝ちかぁ」
「全力でやらなくてもいいんじゃないかしら……」
「そうね? 別に星の欠片はお父様たちに買ってもらえばいいのだものね」
途端にみんなのやる気が削げていく。
さすが、お嬢様。
まぁ、そうなるよね。この学校に通ってる生徒たちは基本みんなお金持ちだから、タダって言葉に引かれる子は少ないんだ。
「あ、言い忘れてました。星の原石を持って帰ってきた生徒には、星の原石以外にもとっておきのご褒美が用意してありますよ」
「えっ!?」
「ご褒美!?」
「まぁ!」
みんなの顔色が変わった。
「ご褒美ってなにかしら?」
「もしかして、宝石とか?」
「私、ダイヤが欲しいわ」
「私はトルマリン! 新しいブローチにしたいの」
わぁ~お。
さすが、発想がみんなブルジョワですこと。
「うわぁ。急にみんな殺気立ったね……」
クラスメイトたちはご褒美という言葉にキャッキャと盛り上がっている。
でも、私は。
「宝石かぁ……」
うーんと考える。
あまり興味はないけど、宝石ってたしか、とっても価値があるんだよね。……あ、待てよ。
「ねぇドロシー。宝石って、魔法石屋に売ったらどのくらい?」
ドロシーにこそっと聞いてみる。
「え? えっと……一番安い宝石でも六千ベリルはいくんじゃないかな?」
ろ、六千ベリル……!!
なんてこった!!
瞳がお金にちゃりんと変わる。
「これは、私たちも負けるわけにいかないねっ!!」
「って、火花ちゃん、もしかしてご褒美売るつもりの!?」
「そりゃそうよ! だって、タダの石が六千ベリルに変身しちゃうんだよ!」
「それはそうだけど……」
授業開始のチャイムが鳴る。と同時に、みんな我先にとほうきにまたがる。
「さぁみんな、頑張っていってらっしゃい!」
ハウル先生の号令を皮切りに、みんな散り散りに空の彼方へ消えていく。
「あっ! しまった、出遅れたっ! ドロシー!」
「わわっ、待って、火花ちゃんっ」
慌ててほうきにまたがって空に浮かぶと、地上からノアくんが声をかけてきた。
「火花! 火花はどこの星の原石狙いなんだ?」
隣には、ノアくんとペアを組むことになったダリアン・ベイカーがいる。
うわ、ノアくん、ダリアンとペアになったんだ。かわいそ。
「いやいやなに言ってるんだい、ノアくんや」
「いや、誰だよ」
「ライバルには教えまっせん!」
「ライバルってお前な」
「あら。私たちをライバルだなんて笑っちゃうわ。ね、ノアくん?」
「ダリアン……」
ノアくんのペアであるダリアンは、馴れ馴れしくノアくんの腕に絡みつきながら、私を嫌味な顔で見下ろしている。
出た。
ダリアンは魔界総理大臣、アルデバラン・ベイカーの一人娘。
縦巻きツインテールで紫色の瞳をした女の子。
ダリアンは高飛車でわがままでプライドが超高い。いつも私を見下してバカにしてくるの。私のことが嫌いなら関わってこなきゃいいのに、なんでかよく絡んでくるんだよね。
まぁ、他の子みたいに陰でこそこそ悪口とかじゃなくて、面と向かってはっきり言ってくるからいいんだけどさ。
「まったく、相変わらずバカな子。学年首席のノアくんと次席の私にかなうわけないのにねっ!」
むぅ……。
く、悔しい!
面と向かって言われると、それはそれで逆に腹立つ。
「そんなの、やってみなきゃ分からないでしょっ!」
「そ……そそ……そうだよ……」
「ドロシーってば声が小さいっ! そんなんじゃ負けちゃうよっ!」
「オーホホホッ!! 聞こえないわよ? なにかしら、空気ちゃん?」
「ちょっとっ! ドロシーにはドロシーって名前があるのっ! 変な呼び方しないでよ!」
「……ダリアン。ドロシーは俺の友達だ。侮辱するな」
さすがのノアくんも、今のは許せないようだ。そりゃそうだよ、空気だなんて!
「あら、それはごめんなさいね」
しかしダリアンは悪びれもせず、けろりとしている。
軽いなっ!! てか心臓鋼かって!!
「残念だけれど、実技は魔力の大きさがものをいうのよ。みんながいくら頑張ろうと、私とノアくんが組んだが最後! ご褒美をもらおうと頑張ったって無駄よ? ご褒美をもらうのは私とノアくんなんだからっ! オーホホホ」
ダリアンは肩を揺らして高らかに笑っている。
くぅっ……!!
めちゃくちゃカチンときたもんね!
「いいもんいいもん! 私、ダリアンとノアくんにだけはぜぇったい負けないんだからっ!!」
ダリアンを睨みつけると、ものすごい眉間に皺を寄せて睨み返された。
ぐ……ま、負けないもんね!
「べーっ!」
誰になにを言われてもドロシーはドロシーだし、私は負けない!
「星の原石はあげないよっ!」
「それはいいけど、お前らふたりじゃ危ないだろ。四人で一緒に行ったほうが効率がいい」
「え~横取りされそう」
主にダリアンに。
「しねぇよ!」
「本当かなぁ」
ダリアンは黙ってあっちのほうを向いている。
「お前な……」
ノアくんの額に青筋が見え始める。
おっと、これはまずい気がする……。
このままだとぐだぐだといつものお説教が始まりそうだったので、私は早々に逃げ出すことにした。
「さぁてドロシー。そろそろ行こうかね!」
「えっ? わぁっ!」
ドロシーの手を掴んで、ほうきで飛び立つ。
「さっ、星の原石を見つける冒険にしゅっぱ~つっ!」
「だから待てって言ってんだろっ! このアホ!!」
バカの次はアホ!?
「私はバカでもアホでもな~いっ!!」