最強風紀委員長は、死亡フラグを回避しない
 奴の中身がどうであれ、美しい造形は無駄に色香が強いのは事実だ。彼の笑みを見た周囲の生徒たちから、途端に黄色い悲鳴が上がった。

 おい、黄色い悲鳴ってなんだ。ここは男子校だろうが。

 実に信じ難いが、これが現実らしいと改めて思わされる光景を前にして、サードは内心げんなりとしてしまった。理解不能な悪寒がゾゾッと背中をはい上がってくる前に、どうにかそれを堪えて冷静な表情を保つ。

 風紀委員長を務める人間は、生徒会長に次ぐ頭脳と戦闘能力が高い人間が選ばれ、卒業するまでに『皇帝』の持つ聖軍事機関への推薦枠に収まることも多い。ちなみに聖軍事機関とは、誇り高い戦士になることを望む少年たちにとって、目標とする場所である――らしい。

 サードは教えられた内容を思い返しながら、呆れた表情を晒してしまわないよう目頭を揉み解す振りをして顔を伏せた。

 残念ながら自分が『聖軍事機関』について知ったのも昨年のことだ。こうしてたびたび忘れるくらい、微塵の興味も覚えてはいない。
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