最強風紀委員長は、死亡フラグを回避しない
 吐血が一旦落ち着いてくれたところで、口許の血を拭った。

 ようやく鏡に映った自分の顔を見てみると、瞳孔を開かせた捕食者のような赤い目があった。いつもより増して、真紅の瞳が白い肌に際立って映えているように見えた。

 本能的に可能性を察して、「まさか」と思わず呟いた。

 以前から『月食』の到来予想は、数日から週間単位でずれること。尚且つ、半悪魔体であれば、時が来れば察知できる可能性についても示唆されてはいた。確かにこの身体は、獲物である悪魔を求めるように出来ている。

 初めて感じるような違和感。

 これは月食に動きがあったことを示すのではないか。そう推測した途端、サードはスミラギに会うべく、保健室に向かって走り出していた。

「おっと、ごめん」

 一階への階段を下る途中、上がってきた二人組の生徒とぶつかりそうになって、そう早口で謝った。

 それは、資料の束を抱えた生徒会会計のユーリスと、生徒会書記のソーマだった。彼らは、ほとんど足も止めず階段を下っていくサードを驚いたように呼びとめた。
< 131 / 345 >

この作品をシェア

pagetop