最強風紀委員長は、死亡フラグを回避しない
 半年間、地上でサードの面倒を見たトム・サリファン子爵は、気難しい表情をした中年男である。研究に携わっている者の一人で、サードは日々、彼と喧嘩の売り買いをしていた。

 彼の屋敷を出る際にも彼を負かしてやったと言うのに、ここに来て全校生徒の前で「俺は彼を父親として尊敬し、彼のためにも~」と泣く泣くするハメになった。おかげでその演説は、サードにとって学園生活で一番の黒歴史である。

 しかも後日、トム・サリファン本人から、役者の癖に顔が引き攣っていた、台詞に想いが籠っていない、言わされている映像は愉快過ぎて笑いが止まらなかった……等々、書かれた手紙で喧嘩を売られた。

 勿論、サードも入学とその後の報告も兼ねて、設定を美化し過ぎた原稿が悪いのだと反論を書いて送り返した。その後に数通ほど、文句を言い合う手紙が続いた。

「ねぇねぇサリファン君、健康診断の調整についての話し合いって、いつだっけ?」

 当時を思い返していたサードは、ロイの脇から顔を出したエミルに声を掛けられて我に返った。相変わらずエミルの身長は、背伸びをしてもロイの肩にすら届かないくらい小さい。
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