最強風紀委員長は、死亡フラグを回避しない
「今日の放課後だ、会長補佐。――もしかして、まだ資料を準備していないという訳じゃねぇだろうな?」

 生徒会の場合は、副会長、会計、書記、と役割を持った役職がいくつか設けられている。彼らがきちんと仕事を処理してくれないと、残りが風紀委員会に回されて困る事態になるのだ。

 そう考えながら睨みつけるように見下ろすと、エミルが「えへへ」と笑って、誤魔化すように可愛らしく首をコテンと傾げた。周りの男子生徒から「可愛い」というおぞましい声が聞こえてゾワッとしたサードは、咄嗟に眉間の皺を深く刻んで「おっほん!」とロイへ目を戻した。

「会長、資料はどうなってんだ? 責任者は会長補佐だった気がするんだが」
「あれは俺が受け持って、昨日までに済ませてソーマに回してある。残りは書記範囲内の仕事だ」

 サードは「初期のソーマ」と口の中でこっそり反芻し、生徒会の中で唯一個性の強くないその一学年生の書記を思い起こした。

 去年まで書記を務めていた三学年生と替わるように就任したのは、伯爵家のソーマという少年である。今年の任期が始まってまだ一ヶ月しか経っていないため、三回ほどしか見掛けていないが、困ったように笑う顔は覚えている。
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