最強風紀委員長は、死亡フラグを回避しない
五章 閉ざされた学園、魔獣の襲来
 発動した強固結界は、内側から眺めると、学園の周囲から空へと伸びるさまが、半透明の巨大なコンクリート壁のようにも見えた。頭上にぽっかりと浮かぶ太陽だけが色彩を残したまま、風もピタリと止んでしまっている。

 静かな世界に取り残されたサードは、しばらく空を仰いだまま状況の把握に時間を費やしてしまった。

 空を遮断するほど、高く伸び上がった強固結界の様子には驚かされる。とはいえ、やはり気になっているのは、完全封鎖される直前に飛び込んできた『二匹の動物』である。

「…………今、『鷹』が入ってこなかったか?」

 トム・サリファンとスミラギに連れられて、街で一度、鷹の標本を目にしたことがある。あれは国鳥にも指定されている希少種だとは聞いていた。鳥の中でも最速を誇るらしいので、魔物の餌食にならないことを願うしかないのだろう。

 灰色の上空にぽっかりと浮かんだ太陽は、陰るような黒い日輪をまとわりつかせていた。
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