最強風紀委員長は、死亡フラグを回避しない
 最強風紀委員長、と言い出したのは、一体誰だったろうか。

 ただ、初めてその言葉を耳にしたとき「そんなんじゃない、ただ、俺が『人間じゃなくて道具』ってだけさ」と、心の中で答えたのは覚えている。

 その呼び名も不名誉なレッテルも、先程の『さよなら』で最後だ。

 もう、『サード・サリファン』を名乗ることはないだろう。

「肉体活性化、解放九十パーセント」

 既に、発作で感じていた身体の不快感は、微塵にも残っていなかった。動き回りたいくらいの力が溢れ、階段を一つ飛びで上の階まで着地してみる。

 ちょっと加減しないと、階上の天井に頭が届きそうなくらい身が軽い。自分が絶好調なのを確認出来て、サードは「よし」と満足した。

「うーん、健康って素晴らしいなぁ」

 発作もない身体の良さを思った。こちらの階の廊下の窓も開けようか、と思ったサードは――不意に、血が騒いでハッとした。


 眩しい太陽を縁の一部に、黒い影が差し始めていた。今世では月食ではない。日食がようやく始まるのだと気付いて、知らず彼の顔に獰猛な笑みが浮かんだ。
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