最強風紀委員長は、死亡フラグを回避しない
 砕け散った窓の向こうに、無数の羽虫のように空を帯状に黒く染め、こちらに押し寄せてくる大群があった。

 よく見れば、それらは黒い大型の犬の姿をしていた。体毛がほとんどない闘犬のような筋肉質の身体は、腐り落ちてひどい悪臭を放っている。眼球のない穴には、眼の代わりを果たすような、禍々しい赤い光りが灯っていた。

「肉体活性化、解放百パーセント!」

 大量の『死食い犬』が窓から校舎内へと侵入してきたのは、そう叫ぶのとほぼ同時だった。涎をまき散らしながら噛み付かんばかりに飛びかかってくる魔獣の動きを、サードは研ぎ澄まされた動体視力で捉えた。

 半悪魔として完全開放された赤い瞳孔は、その一瞬、まるで時間(とき)が止まったかのようにターゲットを捕捉した。それはほんの一秒にも満たない時間で、サードの殺戮衝動は血の本能のままに、獲物の位置と動きを全て把握し終えていた。

 カチリ、と頭の中で意識が切り替わる音がした。

 遠い記憶の向こうで、スピーカー越しにいつも聞こえていた研究者の「さあ『ナンバー03』、戦闘が始まるよ」という声が、聞こえた気がした。
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