最強風紀委員長は、死亡フラグを回避しない
 国では男同士の結婚も認められているようだが、男女であるという教育を受けたサードには衝撃が強かった。たかが健康診断一つでも警備が厚くなり、順番にも調整を入れたりと、風紀委員会の仕事が増える現状にはストレスが溜まる一方である。

 一学年生で生徒会長に就任したロイには、愛人も多くいるらしいというとんでもない噂もあった。生徒会の誰もその事実を肯定しておらず、当人もその件に関しては口にしていないので、事実かどうかは不明だが……。

 だが入学早々、ロイの愛人を主張する少年グループ同士が衝突した際には、風紀委員会が混乱の鎮圧と仲裁を行わなければならかった。あの時サードは、用意された『風紀委員長』の立場や役目を怨んだものである。

「まぁいい。会議は午後四時半だ、遅れんじゃねぇぞ」

 サードは、そう言い残してロイたちのそばを通り抜けた。周りから中傷的な囁きが多く上がったが、聞こえない振りをした。途中「僕の方が可愛いのに」や「あいつもロイ様たちを狙ってるんじゃ」については、心の中で全力否定しておいた。

 今年の健康診断で派遣されてくるのは、去年と同様に王宮医師団だ。彼らに混じって、地下施設の研究員たちもサードの身体の状態を確認しにくる。

 気付かれないよう調整しなければならない。双方それぞれに必要な検診の部屋を確保し、同時進行で同性への色恋に騒ぐ生徒たちが問題を起こさないよう、風紀の仕事もしっかりと行わなければならないのだ。
 
 潜入生活も楽じゃない。

 風紀委員長とは別の『設定』は、他になかったのだろうか……正直、使命以外の時間もたっぷりフル活用してやるぞと言わんばかりに、超多忙な諸々の仕事を都合良く全部押し付けられている気がする……。

 サードは溜息をぐっと堪えて、風紀委員室へと続く階段を上がった。
< 19 / 345 >

この作品をシェア

pagetop