最強風紀委員長は、死亡フラグを回避しない
 あっさり素直に納得しそうなサードを見て、ソーマがやんわりと軌道修正を行いつつこう尋ねた。

「スミラギ先生から事情は聞いたんですけど……その、どれくらい痛みを感じないんですか?」
「極端に鈍くなってる感じ? 骨を砕かれるのは堪えるけど、剣が刺さったくらいなら普通に動けると思う――」

 答えながら、先程までの戦闘で、筋肉や神経系への負荷も全く感じていなかったことに遅れて気付いた。呼吸の乱れも起こらなければ、疲労感もなく、だから周囲一帯の『死食い犬』の殲滅が完了しても実感が伴なかったのだろう。

 完全に肉体活性がされてから、現実味が薄い。

 おかげで、一つの達成感も湧いてこないでいる。そもそも魔獣をどんなに殺しても、胸の内側でくすぶる殺戮衝動は満たされていないとも気付けた。

「――……昔は、舌触りとか温度とか、もっと身近にあったんだけどな。今はまるで夢を見ているみたいで、ちょっとだけつまらないような気がする」

 よく分からないけれど、とサードはポツリとこぼした。
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