最強風紀委員長は、死亡フラグを回避しない
 当時を思い返しながら、サードは知りたいと思っていたことについて尋ねた。

             ※※※

 それは多分、とソーマは口にしかけたが、微塵にもそういった感覚を知らないと告げるような、のんびりとしたサードの顔を見て言い淀んだ。レオンとユーリスが眼差しで牽制してくることに気付いて、言葉を呑み込む。

 この人は、本当に『何も知らない』んだ。

 だから、自分の置かれている『ありえない』現状を、疑おうともしないのだろう。

 恐らく『普通』も『平凡な暮らし』も『人間らしさ』も分からないから、悲観も苦悩もなく、真っ直ぐな眼差しで、自分が置かれている残酷で過酷な現状を、疑わず受け入れてあっさりと口にも出来るのかもしれない。

 それが当たり前だと思って、ここまできた。だから比べようとも、考えたことがないのかもしれないけれど――それがソーマには、とてもとても、なんだかとても哀しくなるのだ。

             ※※※

「サリファン先輩、その、ごめんなさい……。ちょっと、分からないです」
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