最強風紀委員長は、死亡フラグを回避しない
ユーリスが、肩をすくめてあっさりとそう言った。
あの時の物音は、お前らだったのかよとサードは苛々して思った。勝手に彼らに計画を明かして協力をした理事長にも腹が立ってきて、もう隠す必要もないのだとやけになった口調でこう答えた。
「名前なんてねぇよ。物心ついた時は『被検体番号580』、成功検体になったら『ナンバー03』って付けられた。入学の半年前に『サード・サリファン』の名前が用意されたけど、まんま三番目だなって思った。それだけ」
無駄な質問しやがって、と睨み付けると、ユーリスが「なるほどねぇ」と相槌を打った。
「言われてみれば、『サード』って『三番目』って意味だ」
「感心されてんのか、馬鹿にされてんのか分かんねぇ面だぞ、会計。――まぁ、トム・サリファンも『そのまんまだな』って笑い飛ばしてた。説教する時も追い駆け回す時も、しつこいくらい呼んでくるから、俺も今じゃ『サード』って名前がすっかり身に馴染んだというか」
お前はサードだぞ、と彼はよく口にしていた。
わざとそうしている事に途中で気付いていたが、自分は知らない振りをしたのだったと、サードは今更になってそんな事を思い出した。
サードという名前の『人間』なのだと、トム・サリファンは態度で示した。彼はいつだって対等にぶつかってきて、こちらを道具や兵器として扱おうとしなかった。
その時、世界から光が消えた。
不意に訪れた暗黒は、すぐに回復した。再び視界に映し出された景色は、嵐の前触れのように紫かかっていて、ひっそりと静まった不穏な学園敷地内の様子を浮かび上がらせていた。
全身の血が、ピリピリと騒ぎ出すのを感じた。頭上へ目を向けてみると、そこには完全な日食を迎えた太陽があって――
ああ、とうとうこの時が来たのだと、サードはそう思った。
あの時の物音は、お前らだったのかよとサードは苛々して思った。勝手に彼らに計画を明かして協力をした理事長にも腹が立ってきて、もう隠す必要もないのだとやけになった口調でこう答えた。
「名前なんてねぇよ。物心ついた時は『被検体番号580』、成功検体になったら『ナンバー03』って付けられた。入学の半年前に『サード・サリファン』の名前が用意されたけど、まんま三番目だなって思った。それだけ」
無駄な質問しやがって、と睨み付けると、ユーリスが「なるほどねぇ」と相槌を打った。
「言われてみれば、『サード』って『三番目』って意味だ」
「感心されてんのか、馬鹿にされてんのか分かんねぇ面だぞ、会計。――まぁ、トム・サリファンも『そのまんまだな』って笑い飛ばしてた。説教する時も追い駆け回す時も、しつこいくらい呼んでくるから、俺も今じゃ『サード』って名前がすっかり身に馴染んだというか」
お前はサードだぞ、と彼はよく口にしていた。
わざとそうしている事に途中で気付いていたが、自分は知らない振りをしたのだったと、サードは今更になってそんな事を思い出した。
サードという名前の『人間』なのだと、トム・サリファンは態度で示した。彼はいつだって対等にぶつかってきて、こちらを道具や兵器として扱おうとしなかった。
その時、世界から光が消えた。
不意に訪れた暗黒は、すぐに回復した。再び視界に映し出された景色は、嵐の前触れのように紫かかっていて、ひっそりと静まった不穏な学園敷地内の様子を浮かび上がらせていた。
全身の血が、ピリピリと騒ぎ出すのを感じた。頭上へ目を向けてみると、そこには完全な日食を迎えた太陽があって――
ああ、とうとうこの時が来たのだと、サードはそう思った。