最強風紀委員長は、死亡フラグを回避しない
 悪魔の身体は、強い魔力と異質な細胞によって構成されており、『宣誓契約』に定められていない人間の攻撃は無効化されてしまう。そのため『宣誓契約』に参加しなかった者たちが加勢に入れない現状が、彼らの死亡率を圧倒的に高めてもいた。
 
 国は悪魔によって繰り返される惨事に終止符を打つべく、分析と研究を続けた。学園の建つ孤島で繰り広げられた戦いで、共通の友人や肉親を殺された者たちの怨みや正義感は、研究をより大規模なものへと押し上げて、それはとうとう、非人道的な対悪魔兵器の開発にまで発展した。

「『月食の悪魔』については緘口令が敷かれ、悪魔との戦いを定められた『次期皇帝』と、彼に仕える聖剣士の一族の末裔たち、そして歴史によって悪魔に肉親を奪われた人間たちの子孫だけが知っている。――つまりは、知らない一般人の方が圧倒的に多い。出来るだけ、余計なことを悟らせないよう行動しろ」

 血と黴の匂いが満ちる地下研究施設の牢で、繰り返し語られる『月食の悪魔』の話。それを聞いて育ったその少年は、最近は同じ注意事項ばかりを述べるなと思いながら、またしても語る研究者の男の顔を見つめていた。
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