最強風紀委員長は、死亡フラグを回避しない
 ようやく痛みの波が落ち着いたかと思ったら、腹の辺りから「ぐぅ」と妙な音が上がって、ひどい空腹を感じた。喉も乾いており、つい何かないかと目を動かせて、サイドテーブルに置かれた水の入ったグラスが目に留まった。

 どうにか身体の向きを変えて手を伸ばし、グラスの水を飲んだ。口の中にふわりとレモンの香りが広がって、その『冷たい舌触り』に驚いてしまった。喉の乾きが癒えると同時に、更に強い空腹感にも苛(さいな)まれる。

「一体、どうなってんだ……?」

 サードは困惑しつつ、グラスを戻して再びベッドに仰向けになった。

 シャツから覗く白い腕を確認するが、どこにも傷は見られない。シーツを剥いで身体の状況を確認したかったものの、激痛で身体が自由にならないと物の数分で悟って、無理だと諦めた。

 ふと、せっかちなリズムの早い足音が近づいてくるのに気付いて、頭を僅かに上げた。すぐそこに見える扉を訝しげに見ていると、唐突に勢い良く開かれた。
< 303 / 345 >

この作品をシェア

pagetop