最強風紀委員長は、死亡フラグを回避しない
 いつも迷惑を掛けてくる、他の生徒会メンバーにしてもそうだ。彼らは一度だって、こちらの存在を無視したり、排除するような行動や態度に出た事はなかった。いつも正面から『風紀委員長サード・サリファン』と向き合った。
 
 変な奴らだ。放っておいてくれと言っても、距離感も置かず同じ学園に通う生徒として当たり前ように接してきた。それが、いつも慣れなくて――

 だからいつの間にか、兵器としてではなく一人の学生として、学園(ここ)で学生生活を送っている自分がいた。

 まぁ少しなら、面倒にも目を瞑って付き合ってやっていいのかもしれない。本当に少しだけ、そう思えるほどに今のサードは気分が良かった。

「で、調子はどうなんだ、『風紀委員長』?」

 ロイが、意地の悪い笑みを浮かべてそう訊いてきた。

 なんだか取り繕うのも馬鹿らしくなって、サードは嬉しい半面、困っていると打ち明けるように、素の柔かい苦笑を浮かべて見せた。

「体中痛ぇし、自由に動かせない大変さってのが身に染みてる。これまで食欲も感じなかったのに、起きた時から、ずっと腹が減って仕方がないんだぜ? 『人間』って、すげぇ不便だよなぁ」
「それにしては、なんだか嬉しそうだよ~? 肩の荷が下りたのもあるけど、すごく生き生きしているみたいに見えるもの」

 エミルがにっこりと笑う。

 すっかりお見通しらしい。こちらを見つめる全員が、どこか平和な笑みを口許に浮かべていて、サードもいつものように不機嫌な振りも出来ずに笑ってしまった。

「うん。なんか、今の方が『生きてる』なって感じがする」
「そうか。なら、いい」

 ふっと笑うような吐息をこぼしたロイが、そう言って踵を返すと「またな」と後ろ手を振ってあっさり告げた。その後ろに、レオン達が続く。

 サードは、彼らが揃って部屋を出て行くのを見送った。
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