最強風紀委員長は、死亡フラグを回避しない
 生徒会の前を後にしたサードは、真っすぐ保健室へと向かった。

 スミラギは、トム・サリファンの屋敷に教育係としてやって来た時も、ずっと白衣スタイルだった。学園の保健担当として一年しか経っていないとは思えないほど、その姿は保健室に馴染んでいるように思えた。

 サードは、彼が机に向かってペンを走らせていた手を止めて、当日の健康診断の段取りをざっと説明した。

 一通り聞くと、スミラギは相変わらず無駄な質問もせず「分かりました」とだけ言って短い報告会を終了させた。すぐに机の上の書面へと向き直った彼に、サードは続いて、早速猫について訊いてみた。

「学園内に、猫?」

 すると、スミラギは無表情な顔に一瞬、不信感を乗せてそう呟いた。すぐ冷静な面持ちに戻すと、こちらへ再び視線を向けて「飼うことは諦めなさい」といつもの敬語口調で告げてきた。

「この島にも猫の生息は確認されていますが、『月食』が起こった時、あなたは飼い猫を見殺しにすることになります。だから諦めなさい。我々はそこまでサポート出来ません」
「そっか。じゃあ駄目だな」
「はい、駄目です」
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