最強風紀委員長は、死亡フラグを回避しない
 とりあえずサードは、彼らの指示に従って『新しい寿命推測』についてはスミラギに黙っている状況だった。悪魔が現れる月食は、今年度内に発生するらしいので計画に支障がないのは事実だけれど、計画進行を担っている本部研究員の指示には、絶対に従わなければならないと教えられている。

 それに、ここで悠長に無駄話もしていられないだろう。去年にも増して人員不足だというのに、こうしている間にも、風紀委員室ではリューが一人で、書類の処理を頑張っているところなのだ。

 つまりは、ひとまず保健室から撤退したほうがいい。

 追及されたりしたら、検診担当の研究者側と教育係の命令の間で板挟みだ。サードは誤魔化すように素早く手を挙げると、スミラギに「じゃあな」と言って背を向けるように踵を返した。

 不意に、腹から込み上げる不快感に足が止まった。

 内臓と血管が、潰れるような響きが耳の奥で上がる。唐突に強くなった細胞組織の崩壊に、超治癒再生が一時遅れをとったのだと気付いた。
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