最強風紀委員長は、死亡フラグを回避しない
 身体の緊張感が抜けて、サードはその場で腰を下ろした。スミラギが濡れた布巾を寄越してきたので、受け取って口と手についた血液を拭う。胸元を見下ろしてみると、血は制服に掛かっていなかったようで安堵の息がこぼれた。

「サード。発作の間隔はどれくらいですか?」
「ん~……。一日にニ、三回くらいかな」

 二ヶ月に一回の割合だった発作は、今年に入ってから、毎日起こるまでに間隔が縮まっていた。

 半悪魔体としての力を完全解放すれば、全ての細胞が死に絶えるまで、身体は超治癒再生を続けるようにプログラムされている。――だから、悪魔が現れる月食の日まで、どんなにボロボロの状態になろうとも『最低限生きていればいい』のだ。

 サードは幼少の頃、別の実験によって痛覚を半分以上奪われていた。実験に成功しなかった仲間たちが、悪魔細胞による内部破壊に悲鳴を上げて転げ回り、時には激痛でショック死してしまっていた発作も、今や鈍い痛みと不快感と苦しさ程度だ。
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