最強風紀委員長は、死亡フラグを回避しない
 サードが拳を固めると、エミルは少し慌てたように手を振って「さぼりじゃないよッ」と言い、身の潔白を証明するように健康診断受診表を掲げて見せてきた。

「僕、これから健診なのッ。ほら、ちゃんと健診表も持ってるもん!」
「む。確かに健診表だな……あれ、お前一人なのか?」
「途中でソーマと合流する予定だよ」

 そういえば、生徒会は風紀委員会の仕事が円滑であると判断出来れば、後を任せて健診に向かう予定になっていたな、とサードは遅れて思い出した。

 ということは、今のところ、一学年生の体操着が盗まれた以外の問題は起こっていないのだろう。……サードとしては、同性の体操着を盗む生徒の心境が理解出来ないでいるのだが。

 むしろ、盗む動機についても考えたくない。

「ねぇ、サリファン君」

 エミルが首を傾げてそう尋ねてきたので、サードはしつこいなと思って、うんざりしつつそちらへと目を向けた。

「なんだよ」
「ウサギは好き? リスも可愛いと思うんだけど、僕ね、人形だとウサギがいいんだ~」
「ふうん――つか、俺に人形の趣味はねぇ。だから、とっとと行け」
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