最強風紀委員長は、死亡フラグを回避しない
 なんだ『ウサギ』って?

 つか、男なのにヌイグルミが好きとか、こいつ変わってるよな……

 人形が好きなのは、女の子に多い趣味だとサードは教わった。入学当時、大きな白いぬいぐるみを背負っていたエミルは目立っていて、女子のような顔立ちと小さな身体をしていた彼を見た少年たちが、黄色い声を上げていたの覚えている。

 強烈過ぎて忘れられない場面だった。ロイやレオンたちが現れた時も、野郎共の気持ち悪い歓声が飛び交っていたものである。

 いや、考えるまい。考えたら頭が痛くなる!

 そもそも、サードにとってこの学園の独特な空気同様、エミルも理解しがたい少年の一人だった。どうして女の子のような趣味を持っているのだろうか。そして、何故、いつも『ぬいぐるみ』を連れ歩くのかも理解出来ない。

「同じ男なのに、趣味まで可愛らしいのがすごいと思います」

 歩き出したエミルの後ろ姿を見て、風紀部員が何とも言えない様子でそう言った。サードは訝って、その横顔を見てしまう。
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