最強風紀委員長は、死亡フラグを回避しない
 紙皿にケーキを移し、それぞれが使い捨てのフォークを持って、床に腰を降ろした。紅茶の用意に関しては、経験があるリューが淹れ、全員に飲み物が行きわたったところで、誰が合図をした訳でもなく自然と飲食が始まった。

 男たちが脈絡のない話題で盛り上がる中、サードは冷静を装いつつも、――実のところ、初めて見るチーズケーキの前に緊張していた。

 屋敷で見たケーキと、見た目や色や匂いも全然違っている。顔に出すまいと務めながら、まずは一口食べてみた。

 口に入れた途端、サードは数秒ほど動くことを忘れた。初めて食べたチーズケーキは、予想を超える柔らかさを持った美味いケーキだった。二口目、三口目は更に美味しく感じられ、しばし堪能しつつ集中して食べ進めていた。

 そこで、ふと視線を感じて手を止めた。なんだと思って怪訝な表情を向けてみると、いつの間にかリューと部員たちが全員揃ってこちらを見ていた。

「……なんだよ?」

 ぶつきらぼうに問うと、リューが頬をかいた。
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