イケメン過ぎる後輩くんは、可愛い先輩を甘やかしたい。
 私は本を抱きしめたまま後ろを見た。
 

「先輩に言ってます」


 周りをキョロキョロ見渡した。

 
「罰ゲームじゃないですよ」

「……えっ」


 それはそれは美しい微笑みでこちらを見下ろしている彼に、いっそ恐怖すら覚えた。
 

「えー……フフッ、お、面白いね〜…」
 
「冗談でもないです」

「えっ」

 
 訳の分からない状況に一歩後ずさると、赤澤くんは一歩近付く。


 赤澤くんは、いつも独特な空気を纏っている。

 それは透き通るグレーがかった瞳のせいか、肌の白さのせいか、それとも本をめくる動作ひとつ取っても丁寧で上品な仕草のせいなのかはわからない。

 一歩あるくたびにふわりと花の匂いが漂ってきそうな、その匂いに溺れてしまいそうな妖しさがある。

 その空気に飲まれてしまわないよう、私は息を浅くして必死に目を泳がせる。
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