イケメン過ぎる後輩くんは、可愛い先輩を甘やかしたい。
 パシャッと不意打ちで音がしたのは依澄くんのスマホ。

「もっと寄って」

「へ」

 依澄くんはアイスを持った腕で私の肩を引き寄せて、頬と頬をくっつけた。

「!?」

 依澄くんのスマホから再びシャッター音が鳴る。

 撮った写真を確認した依澄くんがふ、と笑う。 

「先輩かわいー」

 依澄くんのスマホを覗かせてもらう。

 どう見てもアイドルと写真を撮ってもらった一般のファンの図にしか見えない。

 ……は!


「依澄くんって視力いくつ?」

 もし依澄くんの視力がよくないんだったら、たまに距離が近すぎるのも、私が可愛く見えてしまうのも少しは納得がいく。

「んー…?数値は覚えてないですけど、モンゴルの遊牧民並みだって検査の人に言われました」

 モンゴルの遊牧民……?

 ラクダに乗って無限に広がる草原の遠く小さな獲物を見つける依澄くんの姿を想像した。

「……とっても良いんだね」

「良いらしいです」
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