イケメン過ぎる後輩くんは、可愛い先輩を甘やかしたい。
 文化祭の日、私は副会長だった兄の影響で生徒会の補助を頼まれていた。

 加えて人数の少ない茶道部の出し物も、学祭実行委員の手伝いも、断り切れずにあっちこっち走り回った記憶がある。


「や、いいよ思い出さなくて……てか、思い出さないでください」


 依澄くんは俯いて、片手で口元を覆った。

 んん……? 思い出さないでって、どういうこと?

 依澄くんの顔を覗き込むと、依澄くんは両手で顔をすっぽり隠してしまった。

「?なんで隠すのー……」

 と、そこで依澄くんの耳が真っ赤になってることに気が付いた。

「えっ、照れてる?」

 依澄くんは顔を覆ったままくぐもった声で、照れてませんと呟いた。

 照れてるじゃん、と思ったけど、これ以上追求しても平行線になりそうだ。

 文化祭でなにがあったんだろう?

 依澄くん的に恥ずかしいことがあったってことだよね。

「……思い出したいなぁ」

「いいって言ってるじゃないですか」

 あ。 ムキになった?

「どうして?」

「どうしても」

 ……なんか依澄くん、

「フフッ」

 可愛い……!
< 31 / 77 >

この作品をシェア

pagetop