イケメン過ぎる後輩くんは、可愛い先輩を甘やかしたい。
「帰宅部になった後、また知らない女子に次々告られるんですよ。半分冷やかしですけど半分はガチで、やっぱり泣くんですよ。もう、俺ってなんなんだろうって。こんなに人を泣かせて、悲しませてる俺って何なんだろうって。だからもう女と関わらないようにしようと思ってた矢先、昔からよく知ってる幼馴染みに告られて……思ったんです。コイツは泣かしたくないって。だから付き合いました。……でも、それは恋じゃなかった」

 そこで男の子は一度大きく深呼吸してから、また独り言のように言葉を連ねていく。
 
「俺なりに頑張ったけど彼女の期待通りにはなれなくて、今日……結局泣かせた」

 洟を啜る音が聞こえた。

「俺といるの、もう辛いって。 それでどこかにいなくなったと思ったら、他の男の胸で泣いてました。 それ見て俺、彼女泣いてんのに、やっと終わったってちょっと安心してるんですよ。 最低でしょ。 それでこんなしんどくなってるとか…意味わかんなくない? ほんと最悪」

 男の子はハー……と息をついて、懸命に自分を落ち着かせようとしてる。

「……」

 元々静かな茶室に、静寂が訪れた。

 お茶を淹れ終えた私は、茶碗を男の子の前に出して作法通りに三つ指をついて頭を下げる。

 男の子はグスッと洟を啜って、小さな声で「どーも」と軽く頭を下げた。
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