イケメン過ぎる後輩くんは、可愛い先輩を甘やかしたい。
 とうとう依澄くんが壁についた腕と腕の間に私を閉じ込めた。


「ダメです。わかってないから俺のこと元カノに譲ろうとしたんでしょ」

「……!」


 両手を掴まれて拘束されると、身動きできなくなる。

 その目は細められて、いつもよりどこか妖艶に見える。


「っ……依澄くん、怒ってる……?」

「うん」


 出会ってからずっと、一貫して素直な依澄くんのまっすぐな視線に、ゾクッとした。


「ひどすぎますよ。うまくいってると思った矢先に理由もよくわからないままフラれて……さすがに参りました」


 弱々しく呟いた依澄くんは、私の肩に自分の頭を置いた。
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