離婚記念日
夏休み。
太一くんと相談して海の近くへ旅行に行った。
電車を乗り継ぎ、久しぶりに手を繋いで長い時間を過ごした。
「荷物重いだろ?」
そう言うと、さっと私のバッグを持ってくれた。
大丈夫、と言っても荷物を返してくれない。
私の手を握ると引っ張るように歩き始めた。
ホテルに荷物を預けると海の家で着替えた。海に行く話をしたら麻美が張り切って一緒に選んでくれた。
いつもと違う莉美でドキッとさせちゃいなよ、と私までドキドキさせられちゃう言葉をぶつけられた。
結局麻美の意見も参考にビキニの水着を選んだ。上はフリルになっていて少し甘めのデザイン。色は白だと麻美に言われたけど、どうしても恥ずかしくて選べず、黒の水玉にした。
「お待たせ」
更衣室から出てくると太一くんはすでに座って待っていた。
手には準備していた浮き輪も膨らませてあった。
私はいざ着替えてみると途端に恥ずかしくなり、パーカーを羽織ってファスナーも閉めたまま。
「行くか」
太一くんは私の手をまた握るとビーチへ出て行った。
最近運動不足だ、なんて言っていたのに、彼の顔に加え、引き締まった上半身にみんな見ているのが分かった。
隣にいるのが私で申し訳ない。
思わず顔を下に向けてしまう。
レジャーシートを広げ、パラソルも立ててもらった。
「海に入るか」
「あ、うん」
私はパーカーを脱ごうか悩んでしまう。海の中でも着ていられるラッシュガードも兼ねているので着ていても問題はない。
むしろ太一くんに集まる視線が怖い。
このまま行こう、と立ち上がるとパーカー脱がないの?と言われてしまう。
「あー、うん。日焼けしちゃうから」
「そっか」
それだけ言うと浮き輪を持って海に入った。
太一くんは泳ぐのが得意らしく、浮き輪に入った私をグイグイ押して沖に向かう。
「太一くん、私泳げないから怖いよ」
「大丈夫。俺がいるから」
浅瀬に比べ人がだいぶ少なくなっていた。
太一くんは私の浮き輪に捕まるとさっと掠めるようにキスをしてきた。
「最近莉美が足りない」
思わぬところでこんなことをされ、私は反応できずにいた。
「今日すごく楽しみにしてたんだ。莉美は?」
「もちろん楽しみにしてたよ。太一くんと最近一緒にいられなくて寂しかった」
「そっか。良かった。いつも莉美は言わないから寂しいと思ってるのは俺だけかと思ってたよ」
「そんなことない」
すぐに言い返すと太一くんは笑っていた。
「嘘だよ。分かってる。莉美は自分から言わない子だって、我慢しちゃう子だって分かってる」
そう言うと頭を撫でられた。
「私も太一くんが何も言ってくれないのは寂しい。疲れた、でも何でも言って欲しい。愚痴ったり、わがままも言って欲しいの」
「言ってる」
「言ってないよ。私ばかり甘えさせてもらってる。太一くんばかり大人で、もっと素の太一くんを教えて欲しい」
珍しく強く言う私に、太一くんは少し驚いていた。
「太一くんが凄いのは分かってる。でも弱ってたり、愚痴ってる違う太一くんも知りたい」
すると太一くんは海へ潜ると私の浮き輪に入って来た。
「こうして抱きしめたいって、もっと言っていい?」
甘い声に胸の奥が締め付けられた。
私が言ったのはそんな甘いお願いじゃなくて、なんていうかちょっと違う話だったはずなのに。
人気が少ないとはいえ、人に見られていないかと思うと恥ずかしい。けど太一くんは離してくれない。狭い浮き輪の中でより密着させられてしまう。何度も唇を合わせ、息が上がる。
「た、太一……くん」
ようやく彼は私の唇から離れてくれた。
「莉美、大好きだよ」
そう言うとおでこにキスをすると浮き輪からするりと抜け出た。
浅瀬まで泳いで戻り、ようやく足がついて私もホッとした。
太一くんと相談して海の近くへ旅行に行った。
電車を乗り継ぎ、久しぶりに手を繋いで長い時間を過ごした。
「荷物重いだろ?」
そう言うと、さっと私のバッグを持ってくれた。
大丈夫、と言っても荷物を返してくれない。
私の手を握ると引っ張るように歩き始めた。
ホテルに荷物を預けると海の家で着替えた。海に行く話をしたら麻美が張り切って一緒に選んでくれた。
いつもと違う莉美でドキッとさせちゃいなよ、と私までドキドキさせられちゃう言葉をぶつけられた。
結局麻美の意見も参考にビキニの水着を選んだ。上はフリルになっていて少し甘めのデザイン。色は白だと麻美に言われたけど、どうしても恥ずかしくて選べず、黒の水玉にした。
「お待たせ」
更衣室から出てくると太一くんはすでに座って待っていた。
手には準備していた浮き輪も膨らませてあった。
私はいざ着替えてみると途端に恥ずかしくなり、パーカーを羽織ってファスナーも閉めたまま。
「行くか」
太一くんは私の手をまた握るとビーチへ出て行った。
最近運動不足だ、なんて言っていたのに、彼の顔に加え、引き締まった上半身にみんな見ているのが分かった。
隣にいるのが私で申し訳ない。
思わず顔を下に向けてしまう。
レジャーシートを広げ、パラソルも立ててもらった。
「海に入るか」
「あ、うん」
私はパーカーを脱ごうか悩んでしまう。海の中でも着ていられるラッシュガードも兼ねているので着ていても問題はない。
むしろ太一くんに集まる視線が怖い。
このまま行こう、と立ち上がるとパーカー脱がないの?と言われてしまう。
「あー、うん。日焼けしちゃうから」
「そっか」
それだけ言うと浮き輪を持って海に入った。
太一くんは泳ぐのが得意らしく、浮き輪に入った私をグイグイ押して沖に向かう。
「太一くん、私泳げないから怖いよ」
「大丈夫。俺がいるから」
浅瀬に比べ人がだいぶ少なくなっていた。
太一くんは私の浮き輪に捕まるとさっと掠めるようにキスをしてきた。
「最近莉美が足りない」
思わぬところでこんなことをされ、私は反応できずにいた。
「今日すごく楽しみにしてたんだ。莉美は?」
「もちろん楽しみにしてたよ。太一くんと最近一緒にいられなくて寂しかった」
「そっか。良かった。いつも莉美は言わないから寂しいと思ってるのは俺だけかと思ってたよ」
「そんなことない」
すぐに言い返すと太一くんは笑っていた。
「嘘だよ。分かってる。莉美は自分から言わない子だって、我慢しちゃう子だって分かってる」
そう言うと頭を撫でられた。
「私も太一くんが何も言ってくれないのは寂しい。疲れた、でも何でも言って欲しい。愚痴ったり、わがままも言って欲しいの」
「言ってる」
「言ってないよ。私ばかり甘えさせてもらってる。太一くんばかり大人で、もっと素の太一くんを教えて欲しい」
珍しく強く言う私に、太一くんは少し驚いていた。
「太一くんが凄いのは分かってる。でも弱ってたり、愚痴ってる違う太一くんも知りたい」
すると太一くんは海へ潜ると私の浮き輪に入って来た。
「こうして抱きしめたいって、もっと言っていい?」
甘い声に胸の奥が締め付けられた。
私が言ったのはそんな甘いお願いじゃなくて、なんていうかちょっと違う話だったはずなのに。
人気が少ないとはいえ、人に見られていないかと思うと恥ずかしい。けど太一くんは離してくれない。狭い浮き輪の中でより密着させられてしまう。何度も唇を合わせ、息が上がる。
「た、太一……くん」
ようやく彼は私の唇から離れてくれた。
「莉美、大好きだよ」
そう言うとおでこにキスをすると浮き輪からするりと抜け出た。
浅瀬まで泳いで戻り、ようやく足がついて私もホッとした。