離婚記念日

絶望の淵

私は離れるための準備を始めなければと気持ちを奮い立たせた。
できるだけ早く、そして太一くんに未練を残さないように距離も離れようと決めた。
やりたかった仕事で、やりがいを感じ始めていたが続けるわけにはいかない。
退職届を出し、1ヶ月後に退職が決まった。
わずかだが溜まっている貯金がある。太一くんは生活費を全て出していてくれたので私のお給料はあまり使っていなかったのが幸いだった。友永さんから慰謝料を払う準備がご両親にはあると言われたが、もらうつもりは一切ない。
どこに引っ越そうかとネットで調べるが気が乗らないせいなのか、なかなか決められずにいた。
そんな時、ふと思い出したのが初めて2人で行った旅行。海の楽しい思い出。ここで静かに暮らせたら、と思うとなんだか気持ちが穏やかになった。
太一くんに見つからないように平日に有給を取り、物件を見に行った。
海の見える、少し高台にあるアパートが見つかった。今住んでいるマンションとは程遠く古い。でも一緒に遊んだ海が見えるし、たまたまランチで入った海沿いのカフェで店員を募集しており働く場所までスムーズに決まった。
もう後戻りはできない。
太一くんに見つからないよう荷物をまとめ始めた。
引っ越しはたまたま入った太一くんの出張の日に決めた。
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