離婚記念日
いくつかサークルの見学をするがこれといったものを見つけられずにいた。
そんな時に見つけた『子ども食堂』への協力をするサークルだった。NGOと協力し、食事の準備や待っている間に子供達の宿題を見てあげたりするボランティアのサークルだ。
子供に関する職業に就きたいと思っていた私は興味を惹かれ麻美と一緒に入会した。
アットホームなサークルで毎回強制ではなく応募制。人手が足りなくならないように持ち回りを決めていたが多い分にはいくらいてもいい。私はバイトもしていたので週に1度くらいの参加率になった。
ある日サークルの友人と一緒に子ども食堂の手伝いに向かうとあの日助けてくれた彼がいて驚いた。

「あれ? 君あの時の子だよね?」

「はい。ありがとうございました」

「このサークルに決めたの? 気が付かなかったよ」

私も入会して3ヶ月。何度となく参加していたが先輩を見かけるのは初めてだった。

「早瀬莉美です。よろしくお願いします」

「片寄太一です。よろしく」

そんな会話をしていると小学生たちが帰ってきた。

「太一、ただいま」

「おう、おかえり。今日は何してきた?」

顔見知りの子供達が彼の周りに集まり始めた。みんな彼を呼び捨てにし、ワイワイガヤガヤと輪ができている。
私は料理の仕込みの手伝いに向かったが、子供達と彼の楽しそうな声になんだが胸が弾む。

「ごめんな、やらせてばかりで」

子供達の宿題を見終わり、ようやくひと段落したのかこちらに戻ってきた。

「いいんです。私みんなの声を聞いてるだけで楽しいので。先輩は人気者なんですね」

「いや、みんな俺のことを年上だと思ってないんだろ。まったく……」

口ではそんなこと言うが、子供たちに対して怒っているわけでもなく、むしろ可愛がっているのだと伝わってくる。
料理を手伝い始めたが、すぐに子供たちが彼を遊びに誘いにきたのであっという間に連れて行かれてしまった。

「待てよ、おい」

そんなこと言っても全然怒ってる口調ではない。子供たちも要領を得たもので、あれよあれよと連れ出して行った。

「片寄先輩って子供たちに人気なんだね」

一緒に来ていた麻美に言われ、私は頷いた。

「本当だね」

食事の時間になりみんなと和気あいあいと食卓を囲んでいく。
ここに来る子供たちの多くはシングルマザーやシングルファーザーだったり、家計が厳しかったりと事情のある子が多い。家に帰っても親がいない、温かいご飯が食べられない子どもたちにとっての家庭のような場所。
私たち大学生はお兄ちゃんやお姉ちゃんのような身近な存在だ。
今日もあっという間に子どもたちを送り出す時間になった。

「またな」

そう言うと子どもたちは手を振り帰っていった。
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