離婚記念日
***
「この前の取材の雑誌が届きましたよ」
同じチームの部下が持ってきた。
「あぁ、ありがとう」
受け取るとパラパラとめくり、自分のページを見ることもなく机の上に置いた。
今の自分にはやらなければならないことがある。
この2年、死ぬほど苦しかった。
幸せがあっという間に崩れ落ちてしまった。
出張から帰るといつもの自宅が寒かった。
何かが違う……。玄関から「ただいま」と声をかけても「おかえり」が聞こえてこない。
なぜか急に不安になり、リビングのドアを開けたが暗い。灯りをつけたが何かが違う。
生活感がないんだ……。
いや、あるべきものがないんだ。
信じたくなくて、いるべき人の名を呼ぶ。
「莉美?」
静まり返った部屋は物音ひとつしない。
恐る恐る寝室のドアを開けるがきちんとベッドメイキングされており、ここも人の気配がない。
まさか、と思いクローゼットを開けると半分がらんとしていた。正確には莉美のものがなくなっていた。
どう言うことなんだ?
訳がわからず、慌ててスマホを手にするが莉美に繋がらない。
リビングに戻ってくると、ここも莉美が大切にしていたスノードームや俺があげたジュエリーケースがなくなっていた。それにいくつも飾ってあったフォトフレームもない。
唖然としてしまった。
そして、ふとダイニングテーブルにあるものが目に入ってしまった。
あの薄い紙には見覚えがある。いや、あの時は婚姻届だった。それが今ここにあるのは離婚届だ。隣にはメモで【ごめんなさい】とだけ書いた紙が置かれていた。
あの日から地獄の日々が始まった。
両親に説得され、自宅に戻らされた。そして稼業を継ぐために自力で入社した証券会社を強引に辞めさせられた。もちろん跡を継ぐつもりはあったが、今ではないと思っていた。なぜこんなに予定より早いのか、それは両親に莉美のことがバレてしまったからだった。
「この前の取材の雑誌が届きましたよ」
同じチームの部下が持ってきた。
「あぁ、ありがとう」
受け取るとパラパラとめくり、自分のページを見ることもなく机の上に置いた。
今の自分にはやらなければならないことがある。
この2年、死ぬほど苦しかった。
幸せがあっという間に崩れ落ちてしまった。
出張から帰るといつもの自宅が寒かった。
何かが違う……。玄関から「ただいま」と声をかけても「おかえり」が聞こえてこない。
なぜか急に不安になり、リビングのドアを開けたが暗い。灯りをつけたが何かが違う。
生活感がないんだ……。
いや、あるべきものがないんだ。
信じたくなくて、いるべき人の名を呼ぶ。
「莉美?」
静まり返った部屋は物音ひとつしない。
恐る恐る寝室のドアを開けるがきちんとベッドメイキングされており、ここも人の気配がない。
まさか、と思いクローゼットを開けると半分がらんとしていた。正確には莉美のものがなくなっていた。
どう言うことなんだ?
訳がわからず、慌ててスマホを手にするが莉美に繋がらない。
リビングに戻ってくると、ここも莉美が大切にしていたスノードームや俺があげたジュエリーケースがなくなっていた。それにいくつも飾ってあったフォトフレームもない。
唖然としてしまった。
そして、ふとダイニングテーブルにあるものが目に入ってしまった。
あの薄い紙には見覚えがある。いや、あの時は婚姻届だった。それが今ここにあるのは離婚届だ。隣にはメモで【ごめんなさい】とだけ書いた紙が置かれていた。
あの日から地獄の日々が始まった。
両親に説得され、自宅に戻らされた。そして稼業を継ぐために自力で入社した証券会社を強引に辞めさせられた。もちろん跡を継ぐつもりはあったが、今ではないと思っていた。なぜこんなに予定より早いのか、それは両親に莉美のことがバレてしまったからだった。