離婚記念日
近くにレストランがあるため駐車場の灯りや、街灯があるので夜の海でもこの時間はまだ明るい。
階段に腰掛けると、寄せて返す波をずっと見続けていた。一定のリズムで繰り返すそれを見ていると苦しくなっていた胸のつかえが少しほぐれていく。波音が心地いい。
ふぅ……。
力が抜け、声が出てしまった。
どれだけ会いたくても会えない。
それでも太一くんがここを訪ねて来てくれたと知れただけで胸が温かくなった。
一方的に離婚を告げ、家から出ていった自分には負目しかない。彼には申し訳ない気持ちで一杯なのに、会いたいと言ってくれた気持ちが嬉しくてたまらなかった。
複雑な気持ちが胸の中を渦巻く。
会いたい。
単調な波の音で落ち着いて来たはずの気持ちがまた溢れ出して来た。
膝を抱え、顔を埋めていると後ろから声が聞こえてきた。
その声に驚き、埋めた顔を上げられずにいた。
「莉美?」
まさか……。
「莉美?」
太一くんの声だ。ずっと聞きたかった彼の声。忘れるはずもない。私の名前を呼ぶ時の彼の声が大好きだった。
なぜここにいるの?
昨日来て、帰ったんじゃなかったの?
「昨日お店に行った。この3年、莉美に会いたくて、仕方なかった。ごめんな、莉美に辛い思いをさせた」
優しい声に膝を抱える手が震える。涙が溢れ出てかおを埋めたまま上げられない。
「莉美? 顔を見せてくれないか?」
私は俯いたまま、首をブンブン振った。
そんな私の頭を優しく撫でる。
「莉美。ずっと会いたかった」
太一くんの声が私の心を震わせる。
私だって会いたかった。たいちくんのことを考えない日なんてなかった。毎日、いつ忘れるんだろうって思いながら暮らしてきた。
「何があったのか、友永から聞いてる。すまなかった」
また下を向いたままで首を振る。
「顔を見せてくれない?」
優しい彼の声に涙が止まらない。
頭に乗せられた大きな手が何度も頭を撫で、懐かしい記憶が呼び起こされる。
階段に腰掛けると、寄せて返す波をずっと見続けていた。一定のリズムで繰り返すそれを見ていると苦しくなっていた胸のつかえが少しほぐれていく。波音が心地いい。
ふぅ……。
力が抜け、声が出てしまった。
どれだけ会いたくても会えない。
それでも太一くんがここを訪ねて来てくれたと知れただけで胸が温かくなった。
一方的に離婚を告げ、家から出ていった自分には負目しかない。彼には申し訳ない気持ちで一杯なのに、会いたいと言ってくれた気持ちが嬉しくてたまらなかった。
複雑な気持ちが胸の中を渦巻く。
会いたい。
単調な波の音で落ち着いて来たはずの気持ちがまた溢れ出して来た。
膝を抱え、顔を埋めていると後ろから声が聞こえてきた。
その声に驚き、埋めた顔を上げられずにいた。
「莉美?」
まさか……。
「莉美?」
太一くんの声だ。ずっと聞きたかった彼の声。忘れるはずもない。私の名前を呼ぶ時の彼の声が大好きだった。
なぜここにいるの?
昨日来て、帰ったんじゃなかったの?
「昨日お店に行った。この3年、莉美に会いたくて、仕方なかった。ごめんな、莉美に辛い思いをさせた」
優しい声に膝を抱える手が震える。涙が溢れ出てかおを埋めたまま上げられない。
「莉美? 顔を見せてくれないか?」
私は俯いたまま、首をブンブン振った。
そんな私の頭を優しく撫でる。
「莉美。ずっと会いたかった」
太一くんの声が私の心を震わせる。
私だって会いたかった。たいちくんのことを考えない日なんてなかった。毎日、いつ忘れるんだろうって思いながら暮らしてきた。
「何があったのか、友永から聞いてる。すまなかった」
また下を向いたままで首を振る。
「顔を見せてくれない?」
優しい彼の声に涙が止まらない。
頭に乗せられた大きな手が何度も頭を撫で、懐かしい記憶が呼び起こされる。