離婚記念日
私は今日も朝から仕事がある。
太一くんはだいぶ復調しているようだが、高速を運転し東京へ帰すのは気になる。時間が許すならここでもう少しゆっくりした方がいいと思う。彼にそう伝えると、少しこのまま寝かせてもらえると助かる、と話していた。
シャワーを浴び、またもう一眠りするように促すと私は身支度を整え出勤した。

「片寄くんはどう?」

通子さんが出勤すると声をかけてきた。

「昨日はかなり熱が高くて驚きましたが、今朝は少し下がっているみたいです。でもまだ本調子じゃなくて、朝ごはん食べたあとまた寝させてほしいって言うのでまだ家にいます」

「あら、そうなの? だったら休んでも良かったのに」

「でも私がいても休まらないでしょうし、食事は支度してきたので大丈夫です」

昨日までの高い熱に比べればだいぶ楽そうに見えた。心配していないわけではないが、元妻の私が甲斐甲斐しく世話を焼くのもどうかと思い、後ろ髪引かれたが出勤してきた。
ランチタイムが過ぎ、落ち着いてくるとふと太一くんが心配になったが、よく考えたら私たちはお互いの連絡先を知らない。私は彼と別れる時にスマホの番号を変えた。その時に彼の連絡先も削除した。
良くも悪くも連絡が取れない状況だ。

「ねぇ、莉美ちゃん。片寄くん大丈夫かしら。見に行った方がいいんじゃない?」

通子さんと話していると旦那さんも顔を出してきた。

「そうだな。様子を見てくるといい」

「いえ。大丈夫だと思います。疲れてたからゆっくり休みたいだろうし」

もちろん心配だけど、私がそこまでお世話をしていいのかわからない。彼との距離感が分からなくなっている。もっと近くにいたい、そばにいたい気持ちが抑えきれなくなりそうで怖い。
< 55 / 66 >

この作品をシェア

pagetop