離婚記念日
仕事を終え、家に帰ると部屋に灯りがついていた。
自分の部屋だけど、チャイムを鳴らした。
すると中から声が聞こえ、玄関が開いた。
「おかえり」
昨日買ったスウェットを着てラフな姿のままの彼が出てきた。
「あ、うん。ただいま」
玄関に入るとしょうがのいい匂いがした。
「おつかれさま。夕飯出来てるよ」
「え? 体調は大丈夫なの?」
まさか料理をしていてくれたなんて思ってもみなかった。昔もこうして料理をつくってもらったのを思い出し、懐かしく感じた。
「昼過ぎまで寝させてもらったらスッキリしたよ。お昼も食べたよ。ありがとな」
「ううん。食べられて良かった」
「さ、夕飯にしないか? ほら、手を洗ってきて」
私の家のはずなのに太一くんに促され、洗面所で手を洗った。
その間に温め直してくれたのか手際よく白米や味噌汁、生姜焼きが並べられた。私の好きなコールスローも置いてある。
向かい合わせに座ると、いつものように手を合わせていた。
いただきます、の声が重なる。
久しぶりの人が作ったご飯。離婚してからは節約のため自分で簡単に作るものやカフェで余ったものを食べるだけだった。実家に帰ることもできず、誰かが作ってくれたのは流産した時に通子さんにしてもらって以来だ。
美味しい……。
シンプルなわかめと玉ねぎの味噌汁だけど、太一くんが作ってくれたからか優しい味がする。生姜焼きもタレが美味しい。なにより私の好きなコールスローを作ってくれたのが嬉しかった。彼の作るコールスローはファーストフードで食べる味をまねつつ、キャベツに加えにんじんやきゅうり、コーン、ハムが入る盛りだくさんのサラダだ。
「懐かしいな」
私は思わず呟いてしまった。
「いつでも作ってあげるよ」
ハハハ……。
それは無理な話。そんな都合のいい話はない。胃袋を掴まれ、思わず頷きそうになる自分を笑いたくなる。
「莉美はコールスローが好きだろ?」
「うん」
「たくさん作ったからな」
「体調崩してたのに食事の支度をさせちゃってごめんね」
休んでもらいたくてうちにいてもらったのに、これじゃあ休めなかったのではないかと心配になる。
「いや、久しぶりにぐっすり寝たよ。莉美の匂いに包まれて安心したのかもな」
さらりとそんなことを言われ、顔が熱くなるのが分かった。それと同時に少し恥ずかしくなってしまい、黙々とご飯に集中し、食べ終えた。
食器を洗い始めると、隣に太一くんも立ち拭いてくれた。
食後のコーヒーを入れ、テレビの前に座る。
あれ? 太一くんはいつ帰るのだろう。
今日は土曜日。昨日は仕事のあとに来たとして、明日は休みなのかな。熱も下がっていそうだし、車を運転して帰れそうだけど。体調が悪くないなら今日も泊まるのはおかしくないかな。
自分の部屋だけど、チャイムを鳴らした。
すると中から声が聞こえ、玄関が開いた。
「おかえり」
昨日買ったスウェットを着てラフな姿のままの彼が出てきた。
「あ、うん。ただいま」
玄関に入るとしょうがのいい匂いがした。
「おつかれさま。夕飯出来てるよ」
「え? 体調は大丈夫なの?」
まさか料理をしていてくれたなんて思ってもみなかった。昔もこうして料理をつくってもらったのを思い出し、懐かしく感じた。
「昼過ぎまで寝させてもらったらスッキリしたよ。お昼も食べたよ。ありがとな」
「ううん。食べられて良かった」
「さ、夕飯にしないか? ほら、手を洗ってきて」
私の家のはずなのに太一くんに促され、洗面所で手を洗った。
その間に温め直してくれたのか手際よく白米や味噌汁、生姜焼きが並べられた。私の好きなコールスローも置いてある。
向かい合わせに座ると、いつものように手を合わせていた。
いただきます、の声が重なる。
久しぶりの人が作ったご飯。離婚してからは節約のため自分で簡単に作るものやカフェで余ったものを食べるだけだった。実家に帰ることもできず、誰かが作ってくれたのは流産した時に通子さんにしてもらって以来だ。
美味しい……。
シンプルなわかめと玉ねぎの味噌汁だけど、太一くんが作ってくれたからか優しい味がする。生姜焼きもタレが美味しい。なにより私の好きなコールスローを作ってくれたのが嬉しかった。彼の作るコールスローはファーストフードで食べる味をまねつつ、キャベツに加えにんじんやきゅうり、コーン、ハムが入る盛りだくさんのサラダだ。
「懐かしいな」
私は思わず呟いてしまった。
「いつでも作ってあげるよ」
ハハハ……。
それは無理な話。そんな都合のいい話はない。胃袋を掴まれ、思わず頷きそうになる自分を笑いたくなる。
「莉美はコールスローが好きだろ?」
「うん」
「たくさん作ったからな」
「体調崩してたのに食事の支度をさせちゃってごめんね」
休んでもらいたくてうちにいてもらったのに、これじゃあ休めなかったのではないかと心配になる。
「いや、久しぶりにぐっすり寝たよ。莉美の匂いに包まれて安心したのかもな」
さらりとそんなことを言われ、顔が熱くなるのが分かった。それと同時に少し恥ずかしくなってしまい、黙々とご飯に集中し、食べ終えた。
食器を洗い始めると、隣に太一くんも立ち拭いてくれた。
食後のコーヒーを入れ、テレビの前に座る。
あれ? 太一くんはいつ帰るのだろう。
今日は土曜日。昨日は仕事のあとに来たとして、明日は休みなのかな。熱も下がっていそうだし、車を運転して帰れそうだけど。体調が悪くないなら今日も泊まるのはおかしくないかな。