離婚記念日
「なぁ、俺たち本当にやり直せないか?」
テレビの前でコーヒーを飲みながら話し始めた。
何度となくこの話をしてきた。そして、その度に無理だと伝えてきた。
「俺が仕事を辞めたら、また商社で働いたらやり直せるのか?」
「え?」
「ブリジャールを辞めたら元に戻れるのか?」
私は彼の言葉に驚いた。
あんな大きな会社を率いていく彼の足枷になってはいけないと思い離婚した。私では彼を支えられない、周りからも認められないと思ったから。
それなのに彼は、簡単に今背負っているものを下そうとするのか……。
「辞めたら許さない。何のために私が身を引いたと思うの?」
地を這うような声に自分でも驚いた。けれど言われた太一くんの顔も驚いた表情を浮かべていた。
「私は太一くんのために身を引いたの。私じゃ何の役にも立たないのはわかっているから。それに、太一くんには大きな会社を率いていくだけの力があると思ったから。それなのに簡単に辞めるなんて言わないで!」
私は悔しくて、腹立たしくて涙が込み上げてきた。別れたくて別れたんじゃない。仕方なくて別れたの。私がどんな思いだったと思うの?
「ごめん。でも……、莉美は俺の気持ち考えたことある? 一方的に離婚届を突きつけられた俺の気持ちはどこにいけばいい?」
あ……。
もちろん分かっていたつもり。でも、彼のためと勝手に私が決めたことでもある。相談もせず、あの時友永さんに言われた言葉を鵜呑みにして彼との別れを決めた。彼にしてみれば寝耳に水で、受け入れ難かっただろう。
「俺は莉美と一生一緒にいたいと思って結婚した。莉美は違ったのか? 周りに何か言われると諦められる程度の気持ちだったってことか?」
「違う!」
「だったら、どうしてあの時相談してくれなかった? そんなに頼りなかったか?」
「違う!」
「私は、太一くんのためだと思って」
「俺のため? 全然俺のためじゃない。この2年、どんな気持ちでいたと思う? 莉美が俺のせいで離れていったのは分かってる。でも、それを相談してもらえなかったのは男として情けないよ。だからこそ、周りに何も言われず認めてもらえるように努力してきた。胸を張って迎えに行けるように頑張ってきた」
彼の言葉が胸にささる。
「莉美の気持ちを考えて離婚に応じた。でも諦めるつもりはなかった。政略結婚とかしなくても会社を延ばせるだけの力をつけてきた。周りにもようやく後継者として実力を認められてきた。何もかも莉美を迎えにいくためだ」
太一くんの熱い言葉が私の胸に直接届き、もどかしくて苦しい。どうしたらいいのかわからなくなる。
「もうこれ以上待てない。やり直したい。莉美の気持ちを知りたい」
彼の目は真剣で、熱を帯びている。
こんなに私のために努力してきてくれた彼をもう拒むことはできない。
でも、これだけは言わなければ……。
テレビの前でコーヒーを飲みながら話し始めた。
何度となくこの話をしてきた。そして、その度に無理だと伝えてきた。
「俺が仕事を辞めたら、また商社で働いたらやり直せるのか?」
「え?」
「ブリジャールを辞めたら元に戻れるのか?」
私は彼の言葉に驚いた。
あんな大きな会社を率いていく彼の足枷になってはいけないと思い離婚した。私では彼を支えられない、周りからも認められないと思ったから。
それなのに彼は、簡単に今背負っているものを下そうとするのか……。
「辞めたら許さない。何のために私が身を引いたと思うの?」
地を這うような声に自分でも驚いた。けれど言われた太一くんの顔も驚いた表情を浮かべていた。
「私は太一くんのために身を引いたの。私じゃ何の役にも立たないのはわかっているから。それに、太一くんには大きな会社を率いていくだけの力があると思ったから。それなのに簡単に辞めるなんて言わないで!」
私は悔しくて、腹立たしくて涙が込み上げてきた。別れたくて別れたんじゃない。仕方なくて別れたの。私がどんな思いだったと思うの?
「ごめん。でも……、莉美は俺の気持ち考えたことある? 一方的に離婚届を突きつけられた俺の気持ちはどこにいけばいい?」
あ……。
もちろん分かっていたつもり。でも、彼のためと勝手に私が決めたことでもある。相談もせず、あの時友永さんに言われた言葉を鵜呑みにして彼との別れを決めた。彼にしてみれば寝耳に水で、受け入れ難かっただろう。
「俺は莉美と一生一緒にいたいと思って結婚した。莉美は違ったのか? 周りに何か言われると諦められる程度の気持ちだったってことか?」
「違う!」
「だったら、どうしてあの時相談してくれなかった? そんなに頼りなかったか?」
「違う!」
「私は、太一くんのためだと思って」
「俺のため? 全然俺のためじゃない。この2年、どんな気持ちでいたと思う? 莉美が俺のせいで離れていったのは分かってる。でも、それを相談してもらえなかったのは男として情けないよ。だからこそ、周りに何も言われず認めてもらえるように努力してきた。胸を張って迎えに行けるように頑張ってきた」
彼の言葉が胸にささる。
「莉美の気持ちを考えて離婚に応じた。でも諦めるつもりはなかった。政略結婚とかしなくても会社を延ばせるだけの力をつけてきた。周りにもようやく後継者として実力を認められてきた。何もかも莉美を迎えにいくためだ」
太一くんの熱い言葉が私の胸に直接届き、もどかしくて苦しい。どうしたらいいのかわからなくなる。
「もうこれ以上待てない。やり直したい。莉美の気持ちを知りたい」
彼の目は真剣で、熱を帯びている。
こんなに私のために努力してきてくれた彼をもう拒むことはできない。
でも、これだけは言わなければ……。