離婚記念日
「俺はやっぱり莉美を諦められない。この話を聞いて、むしろ気持ちが強くなった。莉美と家族に戻りたい」

「太一くん……」

私がふと彼の胸から顔を上げると、くしゃくしゃな顔をした太一くんと目があった。今まで見たことのない彼の顔に胸がギュッとなった。
視線が絡み合う。
そして引き合うように顔が近付いていき、私の湿った唇に彼のそれが重なり合った。
最初は触れ合うだけの、様子を見るようなキス。けれど、あっという間にお互いを確認し合うように形を変えていった。そしていつのまにか深いキスへと進んでいった。
背中がぞくっとするほど彼の唇は私を求めているのを感じる。そして私も彼を求めている。私の手は彼のスウェットを強く握りしめていた。
はぁ、はぁ……。
息が上がるほど、性急にお互いのキスを貪りあってしまう。久しぶりなはずなのに、体は彼を覚えていた。
私の髪の中に差し込まれる指が私の頭を押さえ込む。その仕草が懐かしくもあり、私の心を揺さぶる。

「莉美、莉美……」

私の名を呼ぶ彼の声に私の胸が締め付けられる。

「太一くん」

いくら呼んでも呼び足りないと言わんばかりに私の名前を何度も呼ぶ。

ようやく私たちが離れた頃には唇がヒリヒリしていた。でもそれは切なく、甘く、もどかしい痛みだった。
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