離婚記念日
「俺にはやっぱり莉美しかいない。何故かなんてわからない。俺の全てが莉美でなければダメだと言ってるのが分かるんだ。本能で君を求めてしまうんだ」

「太一くん」

両手を繋がれ、彼と向かい合いそう告げられる。私も心から彼が欲しいと感じていた。彼でなければダメなんだと私も分かっている。どうしても諦めきれない。

「何度でも言う。莉美、愛してる」

「私も、私も好きなの。好きだから諦めないといけないと思ってた。太一くんに幸せになって欲しかった」

「俺の幸せは莉美と一緒にいることだ」

ぎゅっと両手に力が込められるのが分かる。

「いてもいいの?」

「当たり前だろ。会社なんて俺が継がなくても何とでもなる。俺には莉美しかいらない。莉美のためなら会社も捨てられる。でもそうしたら莉美はずっと負い目に感じるから、負担にならないよう努力してきた」

「そんな……」

「莉美がまだ会社を気にするのなら捨てる覚悟はある。でも莉美が気にしていた政略結婚なんてなくてもやっていけるくらい俺は実力を証明してきたつもりだ。誰にも文句は言わせない」

俺の力強い眼差しが胸に刺さる。
ストレートな言葉が私の凍った心を溶かしていく。

「太一くんのそばにいたいよ」

伝えたくて、何度も飲み込んできた言葉は自然と出てきた。
すると彼は満面の笑みで私を抱き上げた。

「きゃっ……」

彼を見下ろすような体制で驚き、思わず頭にしがみついた。
するとくぐもった声がお腹から響いてきた。

「愛してる」

私も彼の髪の中に埋もれるように「愛してる」と伝えた。
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