離婚記念日
あの日から1年。
私たちは東京と伊豆を行ったり来たりしながらお互いの気持ちを重なり合わせて行った。
もうすれ違わないように、離れないように……。
そんな幸せな生活をしていると私の元に信じられない出来事が起こった。
このところ体調がすぐれず、東京に行くための電車が辛くて乗れない。週末に彼が伊豆に来てくれてもどこにも行けず、寝て過ごす日々。
心配した彼に連れられ病院を受診すると妊娠していたのだ。
流産の後、生理不順になり婦人科を受診すると、次の子は望めないかもしれないとやんわり言われていた。太一くんにも正直に伝えると、あんなに子供が好きな彼に「子供だけが全てじゃない」と言われ泣いた日もあった。
そんな私のお腹にまた赤ちゃんが来てくれたのだ。
今は妊娠7週。前の妊娠の時には見えなかった赤ちゃんの姿が袋の中に見えた。

「あ……、あぁ……」

声にならない声を出し、画面を指差す私に、先生は大きく頷いていた。

「心臓も動いているので正常妊娠です。彼も呼びますか?」

私がコクコク頷くと、看護師に連れられた彼が診察室に入ってきた。
先生に説明を受けると彼はあぁ、としか言わない。ふと見ると涙を手で押さえていた。
私だけじゃなく、彼も赤ちゃんを待っていたんだと思った。
ふたりで嬉し泣きをしてしまった。
家に戻るとふたりでまたエコーの写真を見た。そして、彼は私のお腹に手を当て、「待ってたよ」と何度も声をかけていた。
妊娠がわかり、彼はきちんと入籍をしようと伝えてきた。
もちろん私も結婚したい気持ちはある。けれどいまだに認めてもらえていないご両親の手前踏み切る決断ができない。

「親なんて関係ない。大事なのは俺たちの気持ちだろ? それにこの子をきちんとした状態で受け入れてあげたいんだ」

私だってこの子のためを思うと入籍するのが一番だとわかってる。
それでも拭うことができないわだかまり。
そんな様子を見て彼も強くは言えないようだった。
つわりがひどく、仕事に行っている間は気がまぎれるのかそこまでではないが、家に帰るとぐったりとしてしまう。仕事を辞めて一緒に暮らそうと言われるが、まだ踏ん切りがつかない。
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