離婚記念日
それからはとても早かった。
彼の両親に会い、何度も頭を下げられ謝られた。
「自分たちは政略結婚だった。でもこんなにお互いを思い合うことができた。お互いの利にもなった。会社の経営者としてこれほど良いことはないと思い込んでいたんだ。本当に申し訳なかった。無理に引き離すなんて出来なかったのに」
「いえ。ご両親の気持ちもわかったので、私もあの時はああするのがいいと思ったんです。でもこうしてまた太一くんと再開してしまい、気持ちが抑えられなくなってしまって。すみませんでした」
「謝ることなんてない。俺が莉美を探し出したんだ」
するとお義父さんが頷き、笑って口を挟んできた。
「分かっているよ。太一には莉美さんしかいないんだって。離婚させた後のこの子は抜け殻のようでした。でも何かを吹っ切るように仕事に没頭する姿は、鬼気迫るものでしたよ。誰の力も借りないと言わんばかりに頭角を示し、地盤を固めていった」
「あぁ。莉美を諦めて、政略結婚をしなければならないような弱い企業じゃないんだと示しただろう?」
「その通りだな。こんなに安定し、こんなにいい後継者がいるのに、なぜ私は政略結婚にこだわってしまったのだろうと今更ながら反省してるんだ。本当にふたりを引き離してしまい申し訳なかった」
「頭を上げてください」
私は一歩前に歩み寄った。
「莉美さん、ごめんなさい。太一に何度言われても私たちの頭が堅かったせいで辛い思いをさせてしまったわ。許してくださいとは言えないけれど、謝らせてください。本当にごめんなさい」
お義母さんも頭を下げてしまう。
慌てて私は、
「大丈夫ですから。おふたりの気持ちがわかったから私も了承してしまったんです。私では彼を支えきれないと思ったんです。弱かった私も悪かったんです」
私もふたりに頭を下げた。すると太一くんが私の肩に手を触れた。
「離婚を跳ね除けられなかった俺も悪かったんだ。諦めるべきではなかった。だからおれも許してほしい」
「許すなんて……もう何も思ってないよ。今が幸せだから」
私の手は自然とお腹に触れる。まだ5ヶ月。目立つことはないが、ここにいるんだと思うだけで力が出てくる。
「ありがとう。この子と幸せになろう」
太一くんの手は、お腹に触れた私の手に重ねられた。
ご両親のことも今はもう怒っていない。離されるのではないかと不安に感じていたが、今はもうそれもない。
初めて会った彼の両親は思っていた以上に素敵な人たちで、本当にただ太一くんの幸せを願ってこんなことをしてしまったのだと分かった。親はみんな子供に幸せになってほしいのは当たり前のこと。ただ、その一心で今回してしまったのだろう。私だってこの子を不幸にしないために最善の努力をするだろう。
ご両親との確執は解け、これからは前に進んでいけると思った。
彼のご両親は私の両親にも謝罪に行ってくれた。何度も頭を下げ、企業のトップの人たちとは思えないくらいに恐縮してしまっていた。怒っていたはずの私の両親も、その真摯な姿に溜飲を下げた。
彼の両親に会い、何度も頭を下げられ謝られた。
「自分たちは政略結婚だった。でもこんなにお互いを思い合うことができた。お互いの利にもなった。会社の経営者としてこれほど良いことはないと思い込んでいたんだ。本当に申し訳なかった。無理に引き離すなんて出来なかったのに」
「いえ。ご両親の気持ちもわかったので、私もあの時はああするのがいいと思ったんです。でもこうしてまた太一くんと再開してしまい、気持ちが抑えられなくなってしまって。すみませんでした」
「謝ることなんてない。俺が莉美を探し出したんだ」
するとお義父さんが頷き、笑って口を挟んできた。
「分かっているよ。太一には莉美さんしかいないんだって。離婚させた後のこの子は抜け殻のようでした。でも何かを吹っ切るように仕事に没頭する姿は、鬼気迫るものでしたよ。誰の力も借りないと言わんばかりに頭角を示し、地盤を固めていった」
「あぁ。莉美を諦めて、政略結婚をしなければならないような弱い企業じゃないんだと示しただろう?」
「その通りだな。こんなに安定し、こんなにいい後継者がいるのに、なぜ私は政略結婚にこだわってしまったのだろうと今更ながら反省してるんだ。本当にふたりを引き離してしまい申し訳なかった」
「頭を上げてください」
私は一歩前に歩み寄った。
「莉美さん、ごめんなさい。太一に何度言われても私たちの頭が堅かったせいで辛い思いをさせてしまったわ。許してくださいとは言えないけれど、謝らせてください。本当にごめんなさい」
お義母さんも頭を下げてしまう。
慌てて私は、
「大丈夫ですから。おふたりの気持ちがわかったから私も了承してしまったんです。私では彼を支えきれないと思ったんです。弱かった私も悪かったんです」
私もふたりに頭を下げた。すると太一くんが私の肩に手を触れた。
「離婚を跳ね除けられなかった俺も悪かったんだ。諦めるべきではなかった。だからおれも許してほしい」
「許すなんて……もう何も思ってないよ。今が幸せだから」
私の手は自然とお腹に触れる。まだ5ヶ月。目立つことはないが、ここにいるんだと思うだけで力が出てくる。
「ありがとう。この子と幸せになろう」
太一くんの手は、お腹に触れた私の手に重ねられた。
ご両親のことも今はもう怒っていない。離されるのではないかと不安に感じていたが、今はもうそれもない。
初めて会った彼の両親は思っていた以上に素敵な人たちで、本当にただ太一くんの幸せを願ってこんなことをしてしまったのだと分かった。親はみんな子供に幸せになってほしいのは当たり前のこと。ただ、その一心で今回してしまったのだろう。私だってこの子を不幸にしないために最善の努力をするだろう。
ご両親との確執は解け、これからは前に進んでいけると思った。
彼のご両親は私の両親にも謝罪に行ってくれた。何度も頭を下げ、企業のトップの人たちとは思えないくらいに恐縮してしまっていた。怒っていたはずの私の両親も、その真摯な姿に溜飲を下げた。