離婚記念日
東京に着くまで私はそのままウトウトと眠ってしまった。

「着いたよ」

太一くんの声に目を開けるとマンションの駐車場についていた。
何度となく再開してから訪れていたが、またここで暮らすことになると思うと感慨深い。
戻って来れるなんて思っても見なかった。
彼に手を引かれ、部屋へ入る。

「おかえり」

「うん、ただいま」

玄関で抱きしめられ、私も彼の背に手を回した。大きくなったお腹で私の手は回り切らず、思わず笑ってしまう。そんな大きな私でさえ、大きな彼は包み込んでしまう。

「もう離さないから」

「うん。もう離れない」

リビングへ促されるとテーブルの上には婚姻届が置いてあった。そして、ここに置いて行ったはずの結婚指輪も並んで置かれていた。

「今日は何の日か分かるか?」

何の日か? もちろん知っている。
私の涙が枯れるほどに泣いた日だ。
私は頷くと、彼は私の目を見つめてくる。

「今日俺たちが別れた日だ。この空白の3年を埋め、悲しい日ではなく、幸せな日に上書きしよう」

「うん」

私たちは2度目の婚姻届を書いた。そして置かれていた指輪をお互いにはめ合う。少し傷がついたそれは懐かしく、たった1年しかつけていなかったはずなのに、指にしっかりと馴染む。
何度もあなたとの生活を思い出していた。過去には戻りたくても戻れないって思っていた。それなのに今お腹に彼との赤ちゃんがいて、また結婚ができる。あの時には想像もしていなかった未来がここにある。
60になっても、80になっても変わらない。
死ぬ時に彼といて幸せだったと思えるような人生を送りたい。




 
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