離婚記念日
やがて暗くなり映画が始まった。
話題作なだけあり、序盤から面白く引き込まれてしまう。
無意識にふとポップコーンに手を伸ばすと、私の手に彼の手がぶつかって来た。
あ……。
慌てて引っ込めると、先輩も驚いたように手を引っ込めたのがわかった。
小声で謝ると、彼も「ごめん」とかすかに聞こえて来た。
さっきまであれだけ意識していたのに、映画が始まった途端に先輩のことが意識から飛んでしまっていた。
先輩の手は私よりも大きくて、思っていた割も硬く、骨太な感じがした。男の人だな、と感じ、ドキドキしてしまう。
そのあとはなんだか集中力に欠け、面白いはずなのに隣の先輩ばかり気になってしまった。
周りが明るくなると、あまり食べていないポップコーンがあり、先輩もあのあと食べれなかったのだと分かった。
映画館を出るが、このまま帰るのは寂しいなと感じていると先輩に「送るよ」と言われてしまう。
あ……、と思ったが伝えることができずに頷いた。
いつもより遅い時間。先輩は私を自宅まで送ってくれると言う。先輩の家とは反対方向なので申し訳ないから、と伝えたが首を縦に振らなかった。
帰宅ラッシュの電車の中、ドアの近くに立つと先輩は私が押されないようさりげなく手すりに手をつくと私を庇ってくれた。
ガタンと大きく揺れ、周りが動くが先輩は揺れない。私は思わず手近にあった先輩の服につかまってしまった。
「ごめんなさい」
「大丈夫。このままつかまっていると良いよ」
頭上から聞こえた声に私は顔を上げられず、頷いた。
ドアが開くたび、人の動きがあるがまたぎゅっと押し込められてしまう。
30分弱電車に乗るとようやく最寄り駅到着した。
ここから歩いて10分。
これ以上は迷惑をかけられないと断るが、気にしないでと言われて改札を出てしまった。
いつもと違い会話が続かないが、暗闇で先輩の表情をうかうがうことができない。
「あのさ……」
あと少しで家に着きそうなところにある公園で話しかけられた。
「え?」
「俺、莉美ちゃんが好きなんだ。付き合って……くれないか?」
先輩から聞いたことのない自信のなさそうな声色だった。
それよりも今言われた言葉に驚いた。
何を言われたのか自分の耳を疑ってしまう。
「莉美ちゃんがずっと気になっていたんだ。もしよかったら付き合って欲しい」
ストレートな言葉に嘘はなく、私は素直に頷いた。
「私も。私も片寄先輩が好きです」
ずっと心の奥に隠していたけど、知らず知らずのうちに目は彼を追っていた。自分には遠い存在だと諦めていた。でも先輩の言葉に私の鍵が外れた。
「良かった」
そう言うと彼は私の手を引き、そっと抱きしめられた。
初めての彼ができた瞬間だった。
話題作なだけあり、序盤から面白く引き込まれてしまう。
無意識にふとポップコーンに手を伸ばすと、私の手に彼の手がぶつかって来た。
あ……。
慌てて引っ込めると、先輩も驚いたように手を引っ込めたのがわかった。
小声で謝ると、彼も「ごめん」とかすかに聞こえて来た。
さっきまであれだけ意識していたのに、映画が始まった途端に先輩のことが意識から飛んでしまっていた。
先輩の手は私よりも大きくて、思っていた割も硬く、骨太な感じがした。男の人だな、と感じ、ドキドキしてしまう。
そのあとはなんだか集中力に欠け、面白いはずなのに隣の先輩ばかり気になってしまった。
周りが明るくなると、あまり食べていないポップコーンがあり、先輩もあのあと食べれなかったのだと分かった。
映画館を出るが、このまま帰るのは寂しいなと感じていると先輩に「送るよ」と言われてしまう。
あ……、と思ったが伝えることができずに頷いた。
いつもより遅い時間。先輩は私を自宅まで送ってくれると言う。先輩の家とは反対方向なので申し訳ないから、と伝えたが首を縦に振らなかった。
帰宅ラッシュの電車の中、ドアの近くに立つと先輩は私が押されないようさりげなく手すりに手をつくと私を庇ってくれた。
ガタンと大きく揺れ、周りが動くが先輩は揺れない。私は思わず手近にあった先輩の服につかまってしまった。
「ごめんなさい」
「大丈夫。このままつかまっていると良いよ」
頭上から聞こえた声に私は顔を上げられず、頷いた。
ドアが開くたび、人の動きがあるがまたぎゅっと押し込められてしまう。
30分弱電車に乗るとようやく最寄り駅到着した。
ここから歩いて10分。
これ以上は迷惑をかけられないと断るが、気にしないでと言われて改札を出てしまった。
いつもと違い会話が続かないが、暗闇で先輩の表情をうかうがうことができない。
「あのさ……」
あと少しで家に着きそうなところにある公園で話しかけられた。
「え?」
「俺、莉美ちゃんが好きなんだ。付き合って……くれないか?」
先輩から聞いたことのない自信のなさそうな声色だった。
それよりも今言われた言葉に驚いた。
何を言われたのか自分の耳を疑ってしまう。
「莉美ちゃんがずっと気になっていたんだ。もしよかったら付き合って欲しい」
ストレートな言葉に嘘はなく、私は素直に頷いた。
「私も。私も片寄先輩が好きです」
ずっと心の奥に隠していたけど、知らず知らずのうちに目は彼を追っていた。自分には遠い存在だと諦めていた。でも先輩の言葉に私の鍵が外れた。
「良かった」
そう言うと彼は私の手を引き、そっと抱きしめられた。
初めての彼ができた瞬間だった。