悲劇のフランス人形は屈しない
「ちくしょう…。あれが卒アルに載るなんて…」
体育館から抜け出し保健室までの道をヨタヨタと歩きながら、私は呟いた。
額が一部赤くなっているのを、なんとか修正してほしいとカメラマンに頼み込んだが、きちんと遂行してくれるかの保証はない。額が赤い写真が一生残ると思うと、怒りが沸々とわいてくた。
「るーちゃんのメンツに傷をつけやがって。許さん、天城」
私はぶつぶつと呟きながら、保健室の扉を開けた。
「あら、白石さん!」
いつものように白衣を来た先生が、笑顔で出迎えてくれた。
「今日は格別に可愛いわね~」
(休日出勤、お疲れさまです)
心の中で、今日も出勤してくれたことを感謝する。
「今日はどうしたの?」
ドレスを隅々まで観察しながら、先生は聞いた。
「足をくじいてしまって…」
近くにあった椅子に座り、さきほど捩った足首を差し出した。
「少し赤くなっているわね」
「テーピングで固定して欲しいのですが」
私は言った。
「そんなに高いヒール、私なら履けないわ~」
テーピングを探しながら先生が呟いている。
(私だってずっと泣きそうですよ…)
「しっかり巻いておくけど、悪化するようならお医者さんに行ってね」
手際よくテーピングしながら先生は言った。
「はい」
「どう?パーティーは楽しい?」
靴を履いている私に先生は優しく声をかけた。
「そうですね」
(何をもって楽しいと定義するかは分からないけど)
「良かったわ」
先生はどこか悲しそうに笑った。
「中等部の貴女は、いつもどこか辛そうだったもの。何かあるたびに保健室にやって来て、静かに泣いてたこともあったわね」
私は黙っていた。
本編ではあまり描かれることのなかった中等部時代。
(るーちゃんは、その頃から苦しんでいたのか)
「皆の前では気丈に振る舞っていたから、心配してたのよ。でも、この前の体育祭の時、クラスの女子と楽しそうに話しているのを見て、心から安心したわ。やっと心許せるお友だちが出来たんだなと」
(でも、その友達ももういない)
伊坂さんのことを思い出し、胸が熱くなる。
「最近の白石さんは、なんだか生き生きしているわね。怪我の回数は増えたけど、素で生きている感じが伝わってくるわ」
先生が優しく微笑んだ。
体育館から抜け出し保健室までの道をヨタヨタと歩きながら、私は呟いた。
額が一部赤くなっているのを、なんとか修正してほしいとカメラマンに頼み込んだが、きちんと遂行してくれるかの保証はない。額が赤い写真が一生残ると思うと、怒りが沸々とわいてくた。
「るーちゃんのメンツに傷をつけやがって。許さん、天城」
私はぶつぶつと呟きながら、保健室の扉を開けた。
「あら、白石さん!」
いつものように白衣を来た先生が、笑顔で出迎えてくれた。
「今日は格別に可愛いわね~」
(休日出勤、お疲れさまです)
心の中で、今日も出勤してくれたことを感謝する。
「今日はどうしたの?」
ドレスを隅々まで観察しながら、先生は聞いた。
「足をくじいてしまって…」
近くにあった椅子に座り、さきほど捩った足首を差し出した。
「少し赤くなっているわね」
「テーピングで固定して欲しいのですが」
私は言った。
「そんなに高いヒール、私なら履けないわ~」
テーピングを探しながら先生が呟いている。
(私だってずっと泣きそうですよ…)
「しっかり巻いておくけど、悪化するようならお医者さんに行ってね」
手際よくテーピングしながら先生は言った。
「はい」
「どう?パーティーは楽しい?」
靴を履いている私に先生は優しく声をかけた。
「そうですね」
(何をもって楽しいと定義するかは分からないけど)
「良かったわ」
先生はどこか悲しそうに笑った。
「中等部の貴女は、いつもどこか辛そうだったもの。何かあるたびに保健室にやって来て、静かに泣いてたこともあったわね」
私は黙っていた。
本編ではあまり描かれることのなかった中等部時代。
(るーちゃんは、その頃から苦しんでいたのか)
「皆の前では気丈に振る舞っていたから、心配してたのよ。でも、この前の体育祭の時、クラスの女子と楽しそうに話しているのを見て、心から安心したわ。やっと心許せるお友だちが出来たんだなと」
(でも、その友達ももういない)
伊坂さんのことを思い出し、胸が熱くなる。
「最近の白石さんは、なんだか生き生きしているわね。怪我の回数は増えたけど、素で生きている感じが伝わってくるわ」
先生が優しく微笑んだ。