悲劇のフランス人形は屈しない
妹の涙
ジリリリリと目覚ましが勢いよくなり、私は手探りで時計を探した。
外はまだ薄暗く、部屋の中は真っ暗だった。半覚醒のまま、洗顔や歯磨きをし、着替えてから、静かに下へ降りて行った。
外に出ると、突き刺すような冷たい空気が、まだ寝ぼけている脳を起こしてくれる。私はうんと伸びをして、毎週日課としているランニングをするために公園へと向かった。
公園に着くころには、薄暗い世界が淡いピンク色に包まれ始めていた。もはや顔なじみとなったメンバーが、既に公園内を走っている。私もそれに倣い、走ること1時間。辺りはすっかり明るくなり、行き交う人の数も増えて来た。休日出勤する社会人や、犬の散歩、そして子連れが寒空のした早歩きで去っていく。
(そろそろ帰るか)
いつかの天城とばったり会ってしまった事件が未だに忘れない。
ストーカー呼ばわりされたのは、今思い出しただけでも腹が立つ。あれ以来、あの時間に被らないように気をつけていた。
息を整えつつ来た道を戻っていると、「あ!」と大きな声がした。
声をした方に顔を向けると、ボクシングジムで会った不良の金髪男子が私の方へ駆け寄って来た。太陽の光を受けて金髪がキラキラと輝いている。
「お」
私も思わず声が出る。
「いつぞやの暴れ馬くん」
「お前が言うな!」
金髪の子は思いっきり私に突っ込んだが、いやと頭を振った。
「じゃなくて。あれ以来一切ジムに来なくなったから、何か…」
「あら、心配してくれたの?」
にやりと笑う私を睨みつける青年。
「そんな顔しといて、本当性格悪いな」
そんな顔とは、正直白石透の顔を可愛いと思っているのだろう。
一度は腹立たしく感じた子供だが、可愛くみえてくる。
彼の名前を思い出そうとするが、ジムのお兄さんがあだ名で呼んでいたところしか記憶にない。
「かっくんは、この辺に住んでるんだ?」
「かっくん、言うな!」
顔を真っ赤にして言い返す。
「榊克巳。俺、海外暮らしなんだ。今は事情があって日本に来てる」
「へえ。いつまでいるの?」
「年末に帰る予定。で、お前はなんで、幸田さんの息子と知り合いなんだ?」
私を見下げる体勢を見ると、榊が大きく感じる。190センチ以上はありそうだ。
「たくや君はバスケ仲間」
「バスケ仲間?」
「ほら、あそこにバスケのゴールあるでしょ?」
私が指さした方向に榊は顔を向けた。
「よく小学生たちが遊んでるから、時々仲間に入れてもらってんの」
「俺、中学までバスケ部だった」
「ほんと?」
彼の一言に私の目が光った。
「今度私と勝負しない?この体でどこまで出来るか試したいの」
「今度と言わず、今日でもいいぜ」
榊がにやりと笑った。
外はまだ薄暗く、部屋の中は真っ暗だった。半覚醒のまま、洗顔や歯磨きをし、着替えてから、静かに下へ降りて行った。
外に出ると、突き刺すような冷たい空気が、まだ寝ぼけている脳を起こしてくれる。私はうんと伸びをして、毎週日課としているランニングをするために公園へと向かった。
公園に着くころには、薄暗い世界が淡いピンク色に包まれ始めていた。もはや顔なじみとなったメンバーが、既に公園内を走っている。私もそれに倣い、走ること1時間。辺りはすっかり明るくなり、行き交う人の数も増えて来た。休日出勤する社会人や、犬の散歩、そして子連れが寒空のした早歩きで去っていく。
(そろそろ帰るか)
いつかの天城とばったり会ってしまった事件が未だに忘れない。
ストーカー呼ばわりされたのは、今思い出しただけでも腹が立つ。あれ以来、あの時間に被らないように気をつけていた。
息を整えつつ来た道を戻っていると、「あ!」と大きな声がした。
声をした方に顔を向けると、ボクシングジムで会った不良の金髪男子が私の方へ駆け寄って来た。太陽の光を受けて金髪がキラキラと輝いている。
「お」
私も思わず声が出る。
「いつぞやの暴れ馬くん」
「お前が言うな!」
金髪の子は思いっきり私に突っ込んだが、いやと頭を振った。
「じゃなくて。あれ以来一切ジムに来なくなったから、何か…」
「あら、心配してくれたの?」
にやりと笑う私を睨みつける青年。
「そんな顔しといて、本当性格悪いな」
そんな顔とは、正直白石透の顔を可愛いと思っているのだろう。
一度は腹立たしく感じた子供だが、可愛くみえてくる。
彼の名前を思い出そうとするが、ジムのお兄さんがあだ名で呼んでいたところしか記憶にない。
「かっくんは、この辺に住んでるんだ?」
「かっくん、言うな!」
顔を真っ赤にして言い返す。
「榊克巳。俺、海外暮らしなんだ。今は事情があって日本に来てる」
「へえ。いつまでいるの?」
「年末に帰る予定。で、お前はなんで、幸田さんの息子と知り合いなんだ?」
私を見下げる体勢を見ると、榊が大きく感じる。190センチ以上はありそうだ。
「たくや君はバスケ仲間」
「バスケ仲間?」
「ほら、あそこにバスケのゴールあるでしょ?」
私が指さした方向に榊は顔を向けた。
「よく小学生たちが遊んでるから、時々仲間に入れてもらってんの」
「俺、中学までバスケ部だった」
「ほんと?」
彼の一言に私の目が光った。
「今度私と勝負しない?この体でどこまで出来るか試したいの」
「今度と言わず、今日でもいいぜ」
榊がにやりと笑った。