悲劇のフランス人形は屈しない
数十分後、私の瞼の上には新鮮なキュウリが乗っけられていた。
(こんな風に自分が使われるとは思ってなかったよな、キュウリも)
そんなことをぼんやりと考えていると、妹の声が聞こえた。
「お姉さま。受付開始は午後4時よ」
私が半分寝かされた状態で、今夜のクリスマスパーティーの予定表を読み上げている妹の言葉に耳を傾けた。
「5時に理事長の言葉で、そのあと7時までダンスパーティー。この時間は自由が効く時間だけど、人が少ないところには行かないで。誰かと一緒にいる方が安全だわ。キングとクイーンの発表は8時ね」
それから周りに聞かれないように、人がいなくなったところを見計らって妹が小声で言った。
「今夜は何もないと分かっていても、西園寺に近づかないに越したことはないわ。私もパソコンから見ているから、何かあったら必ず連絡して」
「パソコンからって…。まどか、塾は?」
慌ててキュウリを取り、隣でしゃがみ込んでいる妹を見つめた。
「小型のモニターを持っているわ」
妹はどこか得意そうに笑った。
どこでそんなものを手に入れたのかは、聞かないでおくことにした。
「お姉さま。一緒にパーティーに行く方はいるの?」
ふと疑問に思ったのか、まどかが聞いた。
「一応ね」
「どなた?」
興味津々に妹が聞いた。
「…五十嵐」
「五十嵐さま?天城さまのお友だちの?」
妹は意外、という表情をしている。
「そう。なんか成り行きで」
「まあ、五十嵐さまなら、お母さまも満足するわね。あの一家は音楽でかなり有名だから。海外公演にお母さまたちが行ったこともあるわ」
「へー」
(じゃあ、天城との写真はいらないか…)
そんな事を考えていると、いったん席を離れていた美容部員たちが一斉に戻って来た。両腕でドレスを抱え、大小さまざまな箱をいくつも持ち、化粧道具も一式運んできた。
「お嬢様!キュウリはそのままでと言いましたのに!」
美容部員の一人が呆れたように言った。
(いや、キュウリにそこまで固執せんでも…)
「じゃあ、私は行くわね」
時計を見ながらまどかが言った。
「うん、行ってらっしゃい」
「お姉さまも。パーティー楽しんでください」
女性たちがいるからか、少し猫をかぶった態度で妹は部屋から出て行った。
途端に心細くなる。
(事件現場の確認もそうだけど、まずパーティーで上手く立ち回れるか不安すぎる…)
前途多難な気がした。
(こんな風に自分が使われるとは思ってなかったよな、キュウリも)
そんなことをぼんやりと考えていると、妹の声が聞こえた。
「お姉さま。受付開始は午後4時よ」
私が半分寝かされた状態で、今夜のクリスマスパーティーの予定表を読み上げている妹の言葉に耳を傾けた。
「5時に理事長の言葉で、そのあと7時までダンスパーティー。この時間は自由が効く時間だけど、人が少ないところには行かないで。誰かと一緒にいる方が安全だわ。キングとクイーンの発表は8時ね」
それから周りに聞かれないように、人がいなくなったところを見計らって妹が小声で言った。
「今夜は何もないと分かっていても、西園寺に近づかないに越したことはないわ。私もパソコンから見ているから、何かあったら必ず連絡して」
「パソコンからって…。まどか、塾は?」
慌ててキュウリを取り、隣でしゃがみ込んでいる妹を見つめた。
「小型のモニターを持っているわ」
妹はどこか得意そうに笑った。
どこでそんなものを手に入れたのかは、聞かないでおくことにした。
「お姉さま。一緒にパーティーに行く方はいるの?」
ふと疑問に思ったのか、まどかが聞いた。
「一応ね」
「どなた?」
興味津々に妹が聞いた。
「…五十嵐」
「五十嵐さま?天城さまのお友だちの?」
妹は意外、という表情をしている。
「そう。なんか成り行きで」
「まあ、五十嵐さまなら、お母さまも満足するわね。あの一家は音楽でかなり有名だから。海外公演にお母さまたちが行ったこともあるわ」
「へー」
(じゃあ、天城との写真はいらないか…)
そんな事を考えていると、いったん席を離れていた美容部員たちが一斉に戻って来た。両腕でドレスを抱え、大小さまざまな箱をいくつも持ち、化粧道具も一式運んできた。
「お嬢様!キュウリはそのままでと言いましたのに!」
美容部員の一人が呆れたように言った。
(いや、キュウリにそこまで固執せんでも…)
「じゃあ、私は行くわね」
時計を見ながらまどかが言った。
「うん、行ってらっしゃい」
「お姉さまも。パーティー楽しんでください」
女性たちがいるからか、少し猫をかぶった態度で妹は部屋から出て行った。
途端に心細くなる。
(事件現場の確認もそうだけど、まずパーティーで上手く立ち回れるか不安すぎる…)
前途多難な気がした。