深雪くんと運命の恋


 その後のサークルで何をしたか覚えてない。
 読みかけの小説の内容は何も頭に入らなかった。

 部室でも仲睦まじく話している霧江と南雲先輩。

 まさか先輩の好きな人が霧江だったなんて。
 そっか、霧江だったんだ――。

 私は一度だけ霧江と恋バナをしたことがある。
 恥ずかしがり屋でピュアな霧江は恋バナが苦手で、あまり話してくれない。

「今私は好きな人いるよ」って言ったら、ものすごく恥ずかしそうにして「気になってる人がいる」と教えてくれた。
 真っ赤になって照れてるのがすごくかわいいなって思った。

 まさか南雲先輩だったとは思わなかったな……。
 そして先輩は霧江を選んだ。

 私も先輩とはよくおすすめの小説の話とかしてたし、結構いい感じだと思ってたんだけどな……。


 その時、スマホの着信音が鳴った。


「……もしもし」

『あ、空井さん?お疲れ様です』

「お疲れ様です」


 電話の相手は店長だった。


< 9 / 19 >

この作品をシェア

pagetop