初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
「……っ」

 目頭が熱くなる。だけど、泣いてはいけない。
 悔しいのか、恐ろしいのか、悲しいのか。わけのわからない感情が、胸の奥でくすぶっている。どうしたらいいのだろう。

「ケイト、僕は帰るよ。君の意識が戻って安心した」

 ケイトの潤んだ目を見ないようにして、彼は扉へと向かう。
 その後ろ姿を引き留めたくなった。だが、ぐっと堪える。

「ありがとう、ラッシュ」
「ありがとうございました」

 ナナも深く腰を折る。

「また、何かあったら頼ってくれ。僕は、君の味方だから」

 そう言って彼は、部屋を出て行った。
 ラッシュの優しさに甘えている。だけど今は、それに頼るしかない。

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