初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
「あのときと同じことを、君たちにもしたまでだ」

 その声で、ケイトは昨夜のことを思い出そうと、考えをめぐらせる。

 昨夜もラッシュと一緒に夜会に参加していた。ケイト・ダリルであると知られないように、変装をしてだ。
 どうしてもイアンの様子が気になっていた。

 結婚まではうまくいったのだ。
 結婚してから、うまくいかなくなっただけ。

 となれば、例の薬の効果が切れてしまったと考えるのが無難だろう。
 なんとかして、イアンに薬を飲ませたかった。だが、屋敷に戻ってこないのであれば、それもできない。

 夜会には参加していると聞いていたから、ラッシュのパートナーとしてそれに潜り込んでみた。彼の様子をみると、薬の効果が切れているのが一目でわかった。何がなんでも、薬を飲ませたい。
 その気持ちが大きく動いた。

 彼の飲み物に気づかれぬように薬を混ぜる。
 そう、混ぜたはず。なのに――。

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