初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
 一人残された彼女は小さく息をもらし、寝台に腰かける。この寝台も四柱式で天蓋がついている豪奢なもの。新婚の夫婦に相応しい代物である。
 少しだけ肌寒く感じ、自身で肩を抱く。あの夫があたためてくれることなど、期待してはならない。

 ケイト・カーラはケイト・ダリルとなり、イアンと結婚式を挙げた。
 彼に好かれていないだろうとは思っていたが、ここまでとは思っていなかった。
 いや、彼がケイトを愛していないことなんて、前からわかっていたのだ。

 ――彼には、他に愛する人がいる。

 それでもこの結婚は必要なものだった。醜聞を恐れているダリル家と、ダリル家と繋がりをもちたいカーラ家の契約のようなもの。

 ダリル家は歴史ある名門の家柄である。イアンの父は侯爵という爵位を持ち、いずれイアンがそれを継ぐこととなる。

 それにひきかえ、カーラ家は商売人の家柄だ。カーラ商会といえば、この王都で知らぬ者はいないと騒がれるほど、頭一つ飛び出ている
商会でもある。

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