初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
 裕福層を中心に、怪しげな薬が出回っていると耳にしたのは、今から半年前のこと。
 一般的に違法薬物と呼ばれる薬だ。
 この薬を服用すると、気持ちがたかぶり快感を得る。依存性も高く、使用を繰り返す。もちろん、副作用もあるため心身を蝕んでいき、最終的には人としての理性を失う。
 この薬物にカーラ商会が絡んでいそうなところまで突き止めたが、真相には届かない。

 そこで、夜会でケイトに近づく方法を考えた。彼女はカーラ商会長の自慢の娘でもある。
 むしろ、彼女に騙されたという声も、ちらほらと聞いていた。それでもそんな証言だけでは証拠として弱い。

 だから組織から囮を出す話となった。
 ケイトがダリル家の財産を狙っているのは、今までの彼女の行動からも予想がついていた。それを利用しようと言い出したのが、イアン本人だ。

 だが、囮になったイアンが薬に負けた。
 あの夜会で、ケイトと身体の関係を持ったと思われた後も、定期的にケイトと会い、その場で薬を飲まされていた。
 彼の様子がおかしいとマレリもわかっていたが、あの薬の解毒薬がなかった。
 飲むなと言っても、正常な判断ができなくなりつつあるイアンには難しいことである。となれば、必要なのは解毒薬。
 それをロイに相談するも、今のところ、解毒薬はないとのこと。だが彼はすぐに解毒薬の開発に取りかかる。

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