初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
「だけど、僕は……君が不憫で仕方ない。あの夜会に、君を招待しなければこんなことにならなかったのに……。イアンはカーラ商会の資産に……」
それ以上、ラッシュは言葉を続けなかった。イアンはカーラ商会の資産を狙ってケイトと結婚をしたと、そう言いたいのだ。
だがそれは、誰もがそう思っている。
カーラ商会の資産は、何も金だけではない。人脈や技術といったものも含まれる。
金が潤沢にあるダリル侯爵家としては、むしろそちらのほうが欲しいはずだ。
イアンが愛していない女と結婚をしたのは、彼女がカーラ商会の娘だから。それ以外の理由はない。
ただ、それだけ。
「気にしないで、ラッシュ。一人でも私をそうやって思ってくれる人がいれば、私は幸せなの」
そこで少し離れた場所に立っているナナに視線を向ける。
彼女は微笑みながら、こちらをじっと見つめていた。
「そうか、君がそこまで言うのであれば、これ以上、僕からは何も言うことはないが……。だけど、困ったことがあったら僕を頼ってほしい。こうなってしまったのは、僕の責任でもあるから……」
彼の赤茶の髪が、風によってさわりと揺れた。
「ありがとう、ラッシュ」
「ところで、ちょっといやな噂を聞いてしまった」
そう言ってラッシュは夜会について口にした。
それ以上、ラッシュは言葉を続けなかった。イアンはカーラ商会の資産を狙ってケイトと結婚をしたと、そう言いたいのだ。
だがそれは、誰もがそう思っている。
カーラ商会の資産は、何も金だけではない。人脈や技術といったものも含まれる。
金が潤沢にあるダリル侯爵家としては、むしろそちらのほうが欲しいはずだ。
イアンが愛していない女と結婚をしたのは、彼女がカーラ商会の娘だから。それ以外の理由はない。
ただ、それだけ。
「気にしないで、ラッシュ。一人でも私をそうやって思ってくれる人がいれば、私は幸せなの」
そこで少し離れた場所に立っているナナに視線を向ける。
彼女は微笑みながら、こちらをじっと見つめていた。
「そうか、君がそこまで言うのであれば、これ以上、僕からは何も言うことはないが……。だけど、困ったことがあったら僕を頼ってほしい。こうなってしまったのは、僕の責任でもあるから……」
彼の赤茶の髪が、風によってさわりと揺れた。
「ありがとう、ラッシュ」
「ところで、ちょっといやな噂を聞いてしまった」
そう言ってラッシュは夜会について口にした。