前世違う種族で今世は身分差の彼と私
パーティー当日
「よし!天凪花様が来る前に色々用意しよう!」
材料を買った日から一日経った今日。
私は、莉奈ちゃんとクリスマスパーティーの準備をしている。
「ケーキのスポンジは予め作っておいたからあって、いちごは天凪花様が持ってくるもんね」
「うん。だからケーキの飾り付けは天凪花様がきてから一緒にやることにしよう」
「じゃぁ、そうなると料理するのも早いから部屋の飾り付けとかしよう」
「そうだね!去年使った飾りとかある?」
「ここにあるよ!」
「よし!じゃぁ飾り付けしていこう!」
「頑張ろう!」
まずは、輪っかをここにして…。星と、サンタはここで…。
「ねぇこれよくない⁉︎」
そういって、飾り付けをしたところを見せてくれる莉奈。
「うん!すっごく可愛い!」
「でしょ〜!lこうすると可愛いと思ったんだ」
「やっぱり莉奈センスいいね」
「ふっふっふ〜褒めても何もでないぞ〜!」
「何もでなくてもいいよ。そろそろいい時間帯になってきたし私は料理に入ろうかな」
「確かにもうそろそろいいかもね。飾りは任せて!」
「うん!お願いします」
「そちらこそ料理お願いね」
「任せてよ!」
まずは、ポテトサラダとか作ろうかな。唐揚げとかポテトは揚げるのに時間かかるし。先に早く作れるものから作っていこうかな。
ジャガイモを洗って包丁で皮とじゃがいもの目をとる。
他の人参、きゅうりなども洗ったり皮を取ったりしてから、切っていく。
ジャガイモを潰したものに、塩胡椒とマヨネーズを入れて混ぜる。
そうして、今さっき切った野菜とかも混ぜていく。
さらに盛り付けるとき、ツリーの形をイメージしながらお皿に乗せていく。
それに、ブロッコリーをある程度千切ったものをツリーの形をしたものに刺していく。
最後に、ほしを載せて…。
クリスマスツリーのポテトサラダが完成した。
よし、次は揚げ物。
「ねぇ、聞きたいことがあるんだけどね」
「聞きたいこと?」
話を聞きながら揚げ物をする。
「そう!ずっと思っていたことがあったんだけどね」
「うん」
聞きたいことってなんだろう。
「エミリちゃんって天凪花様のこと好きでしょ?」
「へぇ⁈そ、そんなことないよ!!」
急にそんなことを言ってきたので、手に持っていたお箸を油の中に落とすところだった。
「でも、エミリちゃんそんなこと言いながらずっと天凪花様のこと目で追っているし」
「そんなことないよ!」
「いやいや〜。絶対そう!」
「違うって!」
「本当のところは…?」
「友達としか思っていないって!」
「本当は…?」
「だから、「本当のところは?」」
これは、もう誤魔化せる気がしない…。
「好きです…」
「やっぱり」
「なんでわかったの〜!」
「ただ、エミリちゃんがわかりやすかっただけだよ」
「そんなわかりやすかった?」
「うん!とってもわかりやすかった」
「そっか。これからバレないように気をつけないと」
「え?これを機に告白とかしないの?」
「しないよ。どうせ振られるってわかっているし」
「そんなことわからないじゃん!」
「わかるよ。ずっと好きだったけど、ダメっぽいし」
ダメっぽいじゃなくて、ダメ。前世で私はアイルに嫌われていたことがわかった。
だから、今世もきっとアイルは私のことなんて"嫌い"だと思う。
なんで話しかけてくれるかなんて、何か裏の目的があるからに決まっている。
「じゃぁ質問変えるけど、いつから好きなの?」
「それは、そのずっと前から…」
「キャァ−!いいね、いいね!」
「でも、それとこれは別だし」
「そんなことないって!最初から諦めないことが大事なことだよ!」
「本当にダメだってことがもうわかっているから…」
今世では、もう期待なんかしない。期待なんかできない。
「う〜ん。あっ!そうだどうせならお揃いのサンタさんの衣装着ようよ」
「お揃い!いいね」
「うん。もう少しでそっちも終わるでしょ?」
「そうだね。もう終わるね」
「じゃぁ、持ってきた衣装があるからそれに着替えて、天凪花様をびっくりさせよう!」
「ドッキリみたいでいいね!どんな反応するかな」
「エミリちゃんが可愛すぎて倒れるかもよ」
「そんなことを言うんだったら莉奈ちゃんの方が可愛いよ」
「そんなことないって。あっ終わったみたいだね。これ、エミリちゃんの」
「わかった。着替えようか」
そうして、サンタさんの衣装にお着替え。
「わぁ!莉奈ちゃんかわいい!」
「エミリちゃんこそ似合っているよ!これで天凪花様もイチコロだね!」
「もう、そんなことないってば」
「ふふ、記念に写真を撮ろうよ」
「いいね!私も撮りたい!」
クリスマスツーリをバックしにて莉奈ちゃんと一緒に写真を撮る。
「また、思い出増えちゃったなぁ〜」
「来年も一緒に撮りたいよね!」
「そうだね!」
ピンポーン。
「あっ!天凪花様も来たみたい!」
「本当だ!」
莉奈ちゃんと一緒に玄関に向かう。
「天凪花様!メリークリスマス」
「メリークリスマス」
「え?」
「どうかしましたか?」
「いや、違うんだ。違うくはないんだけど…」
何か焦っているアイル。どうしたんだろう。
「エミリちゃんの可愛さに見惚れているだけでしょ」
「そんなことないよ!あるとしたら、莉奈ちゃんの可愛さだよ!」
「はいはい。じゃぁ天凪花様早く入ってください」
「あっそうだね。お邪魔するよ」
「どうぞ」
「そういえば、いちごをちゃんと持ってきたんだ」
「じゃぁ、ケーキの飾り付けをしましょう!」
「飾り付け…僕にもできるのかな?」
「誰でも簡単にできますよ?」
「それは、煽りかな?」
「と、とりあえず、まずいちごを全部洗ってください。私はその間、スポンジと生クリームを用意します。」
「わかった」
「いちご洗い終わりましたか?」
「うん。全部終わったよ」
「じゃぁ次はいちごを切るんですけど、縦に三個に切ってください。あと切らないいちごも五個くらい欲しいので残してくれれば助かります」
「天凪花様のことは私が見ているから、生クリームを完成させて」
心配なアイルを莉奈ちゃんが見てくれるそうなので一安心。
「莉奈ちゃんありがとう」
そうして、なんとか無事に生クリームもイチゴも用意ができたのでスポンジに乗せていく。
「ねぇ、なんで切らないいちごを作ったの?」
「えっとそれは、サンタさんにするからです」
「サンタに?」
「そうです!まずいちごを少し上目に横に切って、その次に切ったところに生クリームを入れて、切ったもう片方を上に載せるとサンタさんになるんです」
「本当だ。確かに見えるね」
「はい。髭を立体にしたりだとか好きな顔を描いたりだとかしてもいいんですけど、今日はそんなにこだわっていないのでこのままにします」
そうして、切ってもらったものを使ってついにショートケーキが完成した。
「すごいね。僕、初めてケーキを作ったよ」
「そうなんですか?少しでも思い出ができたら嬉しいです」
「よし!じゃぁこのケーキは一旦、冷蔵庫に入れてエミリちゃんが作ったご飯でも食べよう!」
「え!これ全部エミリが作ったの?」
「はい。一様作りました」
「一様って言えないくらいすごいけど…?」
「そうだよ!こんなに豪華な食事を作れるのに、一様だなんておかしいよ!」
「ふふっそう言ってもらえてよかった」
そうして、ご飯とケーキを食べた。
前世ではこうして集まって食べることはなかったので、とても新鮮でとても楽しかった。
「でも、あんなに料理苦手だったエミリがこんなに上手くなっているだなんてね」
「え?」
「あっ今のは忘れて」
料理苦手?
「なんで知っているの?それは前世でしか言った事が無いのに」
「…前世?なんのこと?」
そうまた、苦笑いしている。
あぁこの笑いを私は知っている。
この笑いは、
嘘をついている時のアイルがする笑い方だ。
「覚えてたんだね、天凪花様も…。そんなに私のことが面白かった?こいつ、今世でもまた遊んでやろうって」
「そんなこと思っていないよ!」
「嘘つき!嘘つき!嘘つき!そうじゃなきゃ私といる意味がわからないじゃん!」
「だから、それは僕が」
「もういい!!」
イラつきと、悲しさを抱えた私はこの家を飛び出してしまった。
「はぁ…」
なんで、アイルは前世の記憶があるのに私に話しかけてきたんだろう。
前世の記憶があるなら、アイルは私のことが嫌いだったから話しかけてくるはずがないのに…。
それに、私だけ仲良くなれたことを心の底では嬉しく思っていただなんて、それは嫌だ。
あぁ、神様はどうしてこんなに残酷なことをするんですか?私が綺麗なものとは違う、悪魔だからですか?
今回も、何も望まなければよかったのですか?
今は軽々と家にも帰れないし、紗奈ちゃんにも申し訳ないことをしちゃったし、アイルには合わせる顔がない。
本当にどうしようかな…。
「ねぇそこのかわいいサンタさん?泣いているの?」
「え?私ですか?」
「そうだよ」
「私はないてなんかいませんよ」
「じゃぁ、その目からでているものはなんなんだい?」
目から出ている?
思わず目を触る。
「あれ?私、本当に泣いていたの?」
自分でも全然気づかなかった。
「本当に面白い人だね。彼氏に振られたのかい?」
「いえ。彼氏じゃないです」
「じゃぁ、俺と遊ぼうよ」
「いや、結構です」
「まぁまぁそんなこと言わずにさ」
いやだ!触らないでほしい。
「…おい」
「アイル…!」
アイルが来てくれた。
「なんだ?俺は今この子を誘っているんだよ」
「嫌がっているのがわからない?」
「そんなことしらねぇよ。今いいところだから邪魔すんなよ!」
「へぇ〜君、いい度胸してるね。社会で生きれれないようにしてやろうか?」
「そうなるのはそっちだろ?俺は、馬田財閥だ!」
「へぇ〜あの、馬田財閥ねぇ」
「なんだよ!怖くなったか?」
「いや全然。むしろ格下で良かったよ。僕は天凪花財閥の跡取りだからね」
「あ、天凪花?!すいませんでした!まさか天凪花様だなんて思わなかったんです!許してください!」
今さっきまであんなに強気だった人が、一瞬で頭ばっかり下げる人になった。
それはしょうがないことだよね。だって、聞いたこともないような財閥よりも、日常で毎日名前を見たり聞いたりする天凪花財閥の方が、権力が強いし。
「許して欲しいのだったら、早くここから立ち去って。後、今後この子に近づいたら今度こそ家ごと潰させてもらうからね?」
「はい!すみませんでした!」
そう言ってすぐに走り去ってしまった。
「エミリ」
逃げなきゃ、逃げなきゃ。
そう思って咄嗟に走って逃げる。
でも、アイルの方が足が早くてすぐに、追いつかれてしまった。
そして、人がいないところまで引っ張られる。
「なんで、来たの?」
「エミリが心配だったから」
「でも、前世では私のこと嫌いって言ってたじゃない!今、前世の記憶があるのにどうして私に構うの!」
「それは誤解なんだ。いや、誤解を生んでしまった僕が悪いんだけど」
「誤解を生んだ?どういうこと?」
「僕の前世は天使だったんだ」
「知っているよ」
「うん。でも僕は天使でありながら、慈悲深い心とか持つことができなかったんだ。君に会うまでは」
そうして、アイルは昔の出来事を話してくれた。
「君と出会うまで、なんで知らない相手を祝福しないといけないんだろうって思っていながら、天使としての仕事だからって、渋々やっていたんだ。そうしてだんだん、自分が生まれた意味が本当にわからなくなっていたんだ」
彼が生まれてきた意味がわからなくなっていただなんて知らなかった。
「ある日、地上で仕事をしなくちゃいけなくて変装して、人間の街に行ったんだ。そうして、その街では悪魔の気配を消すこともなくただ街を歩いている君を見つけたんだ」
「そ、そんな前から…」
悪魔の気配を消すことを知らなかった頃から知られていただなんて恥ずかしい…。
「最初はね、天使の敵は悪魔だから役目として消そうかなって考えてもいた。でも、小さい子がエミリの近くで転んだ後、エミリが小さい子に優しくするだけではなく、お菓子まであげているところを見てそんなことはすぐにやめたよ。
それから、君が悪魔の幹部であることを知った。でも、あんな優しかったエミリを殺すことはできなくて、いつも助けてきた。でも、ついに上から命令が来てしまったんだ」
「命令?」
「うん。彼女をお前の手で殺せ。さもなくばお前ともども我の手で葬ってもいいぞって。僕は流石に焦った。君も僕もいなくなるなんて嫌だと。でもそうしなければ…。そう決意してあの日君に会ったんだ」
「じゃぁ、なんですぐに私を消さなかったの?」
「自分の手ではエミリを殺せなかったんだ。だから、悪魔専用のを使ってと思っていたんだけど…。最後は君が魔力を全て使い切ってまで魔法を使ったせいで、君は自分で死んでしまった」
「でも、あの魔法はとても綺麗ではありませんでしたか?」
「綺麗だった…。あの光景を見た瞬間そこにいたすべての人たちが戦い合うのを辞めるほど…。それがきっかけで長どうしが話し合って、戦争が終わったんだ。それから君は、祝福の女神エミリとまで崇められるようになったほど」
「え!私はただあの場にいたものたちが、驚いてくれたら嬉しいなっていう気持ちでやっていたのに?」
「そういうところが前世から本当に好きだよ」
「好き?アイルが私のことを?えぇぇぇー!!嘘!」
「嘘じゃないよ」
「でも、最後にアイル私のことずっと嫌いだったって言ってたじゃないですか」
「それは、僕があんなに君にアピールしているのに全然気にもしない君がとても嫌いだったから」
「アピール?そんなのしていました?」
「していたよ。だから、今度生まれ変わったら君に振り向いてもらえるように頑張ろうって思って、君の友達に会いに行ったんだ」
「リナのことですか?」
「うん。君が消えてしまった世界は僕にとって彼女にとってもそんなに価値がなかった。僕は彼女にお願いしてエミリの思い出のあるものを用意してもらったんだ。転生の儀は本人か、思い出のあるものしかできないから」
「それで私のことを転生させてくれたんですか?」
「そうだよ。リナとはあまり気が合わないんだけど、エミリと付き合いたい僕と、エミリともう一度親友になりたいことが一致してそれで転生させることができたんだ」
「知らなかった…」
「そりゃそうだよ。僕たちも一緒に同じところに転生できるようにした。そういう記憶が流れて僕はずっと君を探していた。そして見つけた」
「アイル…」
「こんな男だけどそれでもエミリがずっと好きなんだ。だから、俺と付き合ってください」
アイルが私のことを好き…。
私も心に閉ざそうとしてきた気持ちを、表に出してもいいのだろうか。
今は天使と悪魔じゃなくても、御曹司と庶民。どうしても身分差が生まれてしまう。
長達ではなくて彼の両親から拒絶されたら?いつの日かアイルが私のことを急に嫌いになってしまったら?
そんなネガティブなことばかり考えてしまう。
「エミリが心配していることや困っていることは、できる限り服が取り払っていこうと思う」
私の考えていたことがわかったのかアイルがそう言ってくれた。
アイルは前世でも今世でも私が困っていたことをすぐに解決しようとしてくれた。
例え、彼の両親から私が拒絶されても嫌いになっても私のことを助けてくれるだろう。
そんな彼だから好きになった。
好きに…。そうか、そうだった。私は…。
「私は君のそんなところを好きになったんだ」
「え!それは返事はOKっていうことでいいの?」
「いいんですよ」
「やっとだ。やっと付き合えた」
「ふふ、私もです」
「エミリも?じゃぁ僕が勇気を出して告白でもできていれば…」
「それは私もです!」
「「…。あっはは!」」
つい面白くて笑ってしまった。
「これからもよろしくね。エミリ」
「こちらこそよろしくお願いします。天凪花様」
何故か急に黙り込んだアイル。
「ねぇ、その敬語と名字呼びやめにしない?前世みたいにアイルって呼んでよ」
「えっ?でもいいんですか?」
「いいの。ほら早く」
「ア…イル」
「もう一回」
「アイ…ル」
「もう一回」
なぜか名前を呼んだだけなのに恥ずかしい…。なのにアイルは全然照れてない。こっちはこんなに恥ずかしいのに…。
そうだ、イタズラでもして照れさせてみよう!
「エミリ?」
「アイル…ずっとずっと大好き!」
そうして抱きつく。
これでどうだ!
「あれ?アイル。どうしたの?もしかして私気持ち悪かった?」
「違うよ。そのサンタさんの衣装とエミリの可愛さで心臓が変な方向に動いただけだから」
「え?それは大丈夫なの?病院行った方が…」
「やだ。もっとエミリといたい」
「でも、家には莉奈ちゃんもいるし…。というか、莉奈ちゃん置いていって大丈夫だったかな」
「大丈夫だよ」
「どうしてそんなことが?」
「いや、僕がエミリを追いかけるために、家から出ようと思った時に莉奈がいてこう言ってきだんだよ『早くエミリを追いかけて!前みたいにエミリを泣かしたら今度こそ許さないから!』って」
「莉奈ちゃん…。前っていうことは莉奈ちゃんも」
「うん。記憶が戻っているね」
「やっぱりそうだったんだ」
莉奈ちゃん。ずっと私のことを見守ってくれたんだ。あったらお礼いいたいな。
「それより手繋いでいい?」
「え?急にどうして」
「だって、家に帰りたいんでしょ?だからせめて手を繋いで帰りたい」
「…うん。じゃぁ手を繋いで帰ろ」
そうして、手を繋いで私たちは歩み始めた。
材料を買った日から一日経った今日。
私は、莉奈ちゃんとクリスマスパーティーの準備をしている。
「ケーキのスポンジは予め作っておいたからあって、いちごは天凪花様が持ってくるもんね」
「うん。だからケーキの飾り付けは天凪花様がきてから一緒にやることにしよう」
「じゃぁ、そうなると料理するのも早いから部屋の飾り付けとかしよう」
「そうだね!去年使った飾りとかある?」
「ここにあるよ!」
「よし!じゃぁ飾り付けしていこう!」
「頑張ろう!」
まずは、輪っかをここにして…。星と、サンタはここで…。
「ねぇこれよくない⁉︎」
そういって、飾り付けをしたところを見せてくれる莉奈。
「うん!すっごく可愛い!」
「でしょ〜!lこうすると可愛いと思ったんだ」
「やっぱり莉奈センスいいね」
「ふっふっふ〜褒めても何もでないぞ〜!」
「何もでなくてもいいよ。そろそろいい時間帯になってきたし私は料理に入ろうかな」
「確かにもうそろそろいいかもね。飾りは任せて!」
「うん!お願いします」
「そちらこそ料理お願いね」
「任せてよ!」
まずは、ポテトサラダとか作ろうかな。唐揚げとかポテトは揚げるのに時間かかるし。先に早く作れるものから作っていこうかな。
ジャガイモを洗って包丁で皮とじゃがいもの目をとる。
他の人参、きゅうりなども洗ったり皮を取ったりしてから、切っていく。
ジャガイモを潰したものに、塩胡椒とマヨネーズを入れて混ぜる。
そうして、今さっき切った野菜とかも混ぜていく。
さらに盛り付けるとき、ツリーの形をイメージしながらお皿に乗せていく。
それに、ブロッコリーをある程度千切ったものをツリーの形をしたものに刺していく。
最後に、ほしを載せて…。
クリスマスツリーのポテトサラダが完成した。
よし、次は揚げ物。
「ねぇ、聞きたいことがあるんだけどね」
「聞きたいこと?」
話を聞きながら揚げ物をする。
「そう!ずっと思っていたことがあったんだけどね」
「うん」
聞きたいことってなんだろう。
「エミリちゃんって天凪花様のこと好きでしょ?」
「へぇ⁈そ、そんなことないよ!!」
急にそんなことを言ってきたので、手に持っていたお箸を油の中に落とすところだった。
「でも、エミリちゃんそんなこと言いながらずっと天凪花様のこと目で追っているし」
「そんなことないよ!」
「いやいや〜。絶対そう!」
「違うって!」
「本当のところは…?」
「友達としか思っていないって!」
「本当は…?」
「だから、「本当のところは?」」
これは、もう誤魔化せる気がしない…。
「好きです…」
「やっぱり」
「なんでわかったの〜!」
「ただ、エミリちゃんがわかりやすかっただけだよ」
「そんなわかりやすかった?」
「うん!とってもわかりやすかった」
「そっか。これからバレないように気をつけないと」
「え?これを機に告白とかしないの?」
「しないよ。どうせ振られるってわかっているし」
「そんなことわからないじゃん!」
「わかるよ。ずっと好きだったけど、ダメっぽいし」
ダメっぽいじゃなくて、ダメ。前世で私はアイルに嫌われていたことがわかった。
だから、今世もきっとアイルは私のことなんて"嫌い"だと思う。
なんで話しかけてくれるかなんて、何か裏の目的があるからに決まっている。
「じゃぁ質問変えるけど、いつから好きなの?」
「それは、そのずっと前から…」
「キャァ−!いいね、いいね!」
「でも、それとこれは別だし」
「そんなことないって!最初から諦めないことが大事なことだよ!」
「本当にダメだってことがもうわかっているから…」
今世では、もう期待なんかしない。期待なんかできない。
「う〜ん。あっ!そうだどうせならお揃いのサンタさんの衣装着ようよ」
「お揃い!いいね」
「うん。もう少しでそっちも終わるでしょ?」
「そうだね。もう終わるね」
「じゃぁ、持ってきた衣装があるからそれに着替えて、天凪花様をびっくりさせよう!」
「ドッキリみたいでいいね!どんな反応するかな」
「エミリちゃんが可愛すぎて倒れるかもよ」
「そんなことを言うんだったら莉奈ちゃんの方が可愛いよ」
「そんなことないって。あっ終わったみたいだね。これ、エミリちゃんの」
「わかった。着替えようか」
そうして、サンタさんの衣装にお着替え。
「わぁ!莉奈ちゃんかわいい!」
「エミリちゃんこそ似合っているよ!これで天凪花様もイチコロだね!」
「もう、そんなことないってば」
「ふふ、記念に写真を撮ろうよ」
「いいね!私も撮りたい!」
クリスマスツーリをバックしにて莉奈ちゃんと一緒に写真を撮る。
「また、思い出増えちゃったなぁ〜」
「来年も一緒に撮りたいよね!」
「そうだね!」
ピンポーン。
「あっ!天凪花様も来たみたい!」
「本当だ!」
莉奈ちゃんと一緒に玄関に向かう。
「天凪花様!メリークリスマス」
「メリークリスマス」
「え?」
「どうかしましたか?」
「いや、違うんだ。違うくはないんだけど…」
何か焦っているアイル。どうしたんだろう。
「エミリちゃんの可愛さに見惚れているだけでしょ」
「そんなことないよ!あるとしたら、莉奈ちゃんの可愛さだよ!」
「はいはい。じゃぁ天凪花様早く入ってください」
「あっそうだね。お邪魔するよ」
「どうぞ」
「そういえば、いちごをちゃんと持ってきたんだ」
「じゃぁ、ケーキの飾り付けをしましょう!」
「飾り付け…僕にもできるのかな?」
「誰でも簡単にできますよ?」
「それは、煽りかな?」
「と、とりあえず、まずいちごを全部洗ってください。私はその間、スポンジと生クリームを用意します。」
「わかった」
「いちご洗い終わりましたか?」
「うん。全部終わったよ」
「じゃぁ次はいちごを切るんですけど、縦に三個に切ってください。あと切らないいちごも五個くらい欲しいので残してくれれば助かります」
「天凪花様のことは私が見ているから、生クリームを完成させて」
心配なアイルを莉奈ちゃんが見てくれるそうなので一安心。
「莉奈ちゃんありがとう」
そうして、なんとか無事に生クリームもイチゴも用意ができたのでスポンジに乗せていく。
「ねぇ、なんで切らないいちごを作ったの?」
「えっとそれは、サンタさんにするからです」
「サンタに?」
「そうです!まずいちごを少し上目に横に切って、その次に切ったところに生クリームを入れて、切ったもう片方を上に載せるとサンタさんになるんです」
「本当だ。確かに見えるね」
「はい。髭を立体にしたりだとか好きな顔を描いたりだとかしてもいいんですけど、今日はそんなにこだわっていないのでこのままにします」
そうして、切ってもらったものを使ってついにショートケーキが完成した。
「すごいね。僕、初めてケーキを作ったよ」
「そうなんですか?少しでも思い出ができたら嬉しいです」
「よし!じゃぁこのケーキは一旦、冷蔵庫に入れてエミリちゃんが作ったご飯でも食べよう!」
「え!これ全部エミリが作ったの?」
「はい。一様作りました」
「一様って言えないくらいすごいけど…?」
「そうだよ!こんなに豪華な食事を作れるのに、一様だなんておかしいよ!」
「ふふっそう言ってもらえてよかった」
そうして、ご飯とケーキを食べた。
前世ではこうして集まって食べることはなかったので、とても新鮮でとても楽しかった。
「でも、あんなに料理苦手だったエミリがこんなに上手くなっているだなんてね」
「え?」
「あっ今のは忘れて」
料理苦手?
「なんで知っているの?それは前世でしか言った事が無いのに」
「…前世?なんのこと?」
そうまた、苦笑いしている。
あぁこの笑いを私は知っている。
この笑いは、
嘘をついている時のアイルがする笑い方だ。
「覚えてたんだね、天凪花様も…。そんなに私のことが面白かった?こいつ、今世でもまた遊んでやろうって」
「そんなこと思っていないよ!」
「嘘つき!嘘つき!嘘つき!そうじゃなきゃ私といる意味がわからないじゃん!」
「だから、それは僕が」
「もういい!!」
イラつきと、悲しさを抱えた私はこの家を飛び出してしまった。
「はぁ…」
なんで、アイルは前世の記憶があるのに私に話しかけてきたんだろう。
前世の記憶があるなら、アイルは私のことが嫌いだったから話しかけてくるはずがないのに…。
それに、私だけ仲良くなれたことを心の底では嬉しく思っていただなんて、それは嫌だ。
あぁ、神様はどうしてこんなに残酷なことをするんですか?私が綺麗なものとは違う、悪魔だからですか?
今回も、何も望まなければよかったのですか?
今は軽々と家にも帰れないし、紗奈ちゃんにも申し訳ないことをしちゃったし、アイルには合わせる顔がない。
本当にどうしようかな…。
「ねぇそこのかわいいサンタさん?泣いているの?」
「え?私ですか?」
「そうだよ」
「私はないてなんかいませんよ」
「じゃぁ、その目からでているものはなんなんだい?」
目から出ている?
思わず目を触る。
「あれ?私、本当に泣いていたの?」
自分でも全然気づかなかった。
「本当に面白い人だね。彼氏に振られたのかい?」
「いえ。彼氏じゃないです」
「じゃぁ、俺と遊ぼうよ」
「いや、結構です」
「まぁまぁそんなこと言わずにさ」
いやだ!触らないでほしい。
「…おい」
「アイル…!」
アイルが来てくれた。
「なんだ?俺は今この子を誘っているんだよ」
「嫌がっているのがわからない?」
「そんなことしらねぇよ。今いいところだから邪魔すんなよ!」
「へぇ〜君、いい度胸してるね。社会で生きれれないようにしてやろうか?」
「そうなるのはそっちだろ?俺は、馬田財閥だ!」
「へぇ〜あの、馬田財閥ねぇ」
「なんだよ!怖くなったか?」
「いや全然。むしろ格下で良かったよ。僕は天凪花財閥の跡取りだからね」
「あ、天凪花?!すいませんでした!まさか天凪花様だなんて思わなかったんです!許してください!」
今さっきまであんなに強気だった人が、一瞬で頭ばっかり下げる人になった。
それはしょうがないことだよね。だって、聞いたこともないような財閥よりも、日常で毎日名前を見たり聞いたりする天凪花財閥の方が、権力が強いし。
「許して欲しいのだったら、早くここから立ち去って。後、今後この子に近づいたら今度こそ家ごと潰させてもらうからね?」
「はい!すみませんでした!」
そう言ってすぐに走り去ってしまった。
「エミリ」
逃げなきゃ、逃げなきゃ。
そう思って咄嗟に走って逃げる。
でも、アイルの方が足が早くてすぐに、追いつかれてしまった。
そして、人がいないところまで引っ張られる。
「なんで、来たの?」
「エミリが心配だったから」
「でも、前世では私のこと嫌いって言ってたじゃない!今、前世の記憶があるのにどうして私に構うの!」
「それは誤解なんだ。いや、誤解を生んでしまった僕が悪いんだけど」
「誤解を生んだ?どういうこと?」
「僕の前世は天使だったんだ」
「知っているよ」
「うん。でも僕は天使でありながら、慈悲深い心とか持つことができなかったんだ。君に会うまでは」
そうして、アイルは昔の出来事を話してくれた。
「君と出会うまで、なんで知らない相手を祝福しないといけないんだろうって思っていながら、天使としての仕事だからって、渋々やっていたんだ。そうしてだんだん、自分が生まれた意味が本当にわからなくなっていたんだ」
彼が生まれてきた意味がわからなくなっていただなんて知らなかった。
「ある日、地上で仕事をしなくちゃいけなくて変装して、人間の街に行ったんだ。そうして、その街では悪魔の気配を消すこともなくただ街を歩いている君を見つけたんだ」
「そ、そんな前から…」
悪魔の気配を消すことを知らなかった頃から知られていただなんて恥ずかしい…。
「最初はね、天使の敵は悪魔だから役目として消そうかなって考えてもいた。でも、小さい子がエミリの近くで転んだ後、エミリが小さい子に優しくするだけではなく、お菓子まであげているところを見てそんなことはすぐにやめたよ。
それから、君が悪魔の幹部であることを知った。でも、あんな優しかったエミリを殺すことはできなくて、いつも助けてきた。でも、ついに上から命令が来てしまったんだ」
「命令?」
「うん。彼女をお前の手で殺せ。さもなくばお前ともども我の手で葬ってもいいぞって。僕は流石に焦った。君も僕もいなくなるなんて嫌だと。でもそうしなければ…。そう決意してあの日君に会ったんだ」
「じゃぁ、なんですぐに私を消さなかったの?」
「自分の手ではエミリを殺せなかったんだ。だから、悪魔専用のを使ってと思っていたんだけど…。最後は君が魔力を全て使い切ってまで魔法を使ったせいで、君は自分で死んでしまった」
「でも、あの魔法はとても綺麗ではありませんでしたか?」
「綺麗だった…。あの光景を見た瞬間そこにいたすべての人たちが戦い合うのを辞めるほど…。それがきっかけで長どうしが話し合って、戦争が終わったんだ。それから君は、祝福の女神エミリとまで崇められるようになったほど」
「え!私はただあの場にいたものたちが、驚いてくれたら嬉しいなっていう気持ちでやっていたのに?」
「そういうところが前世から本当に好きだよ」
「好き?アイルが私のことを?えぇぇぇー!!嘘!」
「嘘じゃないよ」
「でも、最後にアイル私のことずっと嫌いだったって言ってたじゃないですか」
「それは、僕があんなに君にアピールしているのに全然気にもしない君がとても嫌いだったから」
「アピール?そんなのしていました?」
「していたよ。だから、今度生まれ変わったら君に振り向いてもらえるように頑張ろうって思って、君の友達に会いに行ったんだ」
「リナのことですか?」
「うん。君が消えてしまった世界は僕にとって彼女にとってもそんなに価値がなかった。僕は彼女にお願いしてエミリの思い出のあるものを用意してもらったんだ。転生の儀は本人か、思い出のあるものしかできないから」
「それで私のことを転生させてくれたんですか?」
「そうだよ。リナとはあまり気が合わないんだけど、エミリと付き合いたい僕と、エミリともう一度親友になりたいことが一致してそれで転生させることができたんだ」
「知らなかった…」
「そりゃそうだよ。僕たちも一緒に同じところに転生できるようにした。そういう記憶が流れて僕はずっと君を探していた。そして見つけた」
「アイル…」
「こんな男だけどそれでもエミリがずっと好きなんだ。だから、俺と付き合ってください」
アイルが私のことを好き…。
私も心に閉ざそうとしてきた気持ちを、表に出してもいいのだろうか。
今は天使と悪魔じゃなくても、御曹司と庶民。どうしても身分差が生まれてしまう。
長達ではなくて彼の両親から拒絶されたら?いつの日かアイルが私のことを急に嫌いになってしまったら?
そんなネガティブなことばかり考えてしまう。
「エミリが心配していることや困っていることは、できる限り服が取り払っていこうと思う」
私の考えていたことがわかったのかアイルがそう言ってくれた。
アイルは前世でも今世でも私が困っていたことをすぐに解決しようとしてくれた。
例え、彼の両親から私が拒絶されても嫌いになっても私のことを助けてくれるだろう。
そんな彼だから好きになった。
好きに…。そうか、そうだった。私は…。
「私は君のそんなところを好きになったんだ」
「え!それは返事はOKっていうことでいいの?」
「いいんですよ」
「やっとだ。やっと付き合えた」
「ふふ、私もです」
「エミリも?じゃぁ僕が勇気を出して告白でもできていれば…」
「それは私もです!」
「「…。あっはは!」」
つい面白くて笑ってしまった。
「これからもよろしくね。エミリ」
「こちらこそよろしくお願いします。天凪花様」
何故か急に黙り込んだアイル。
「ねぇ、その敬語と名字呼びやめにしない?前世みたいにアイルって呼んでよ」
「えっ?でもいいんですか?」
「いいの。ほら早く」
「ア…イル」
「もう一回」
「アイ…ル」
「もう一回」
なぜか名前を呼んだだけなのに恥ずかしい…。なのにアイルは全然照れてない。こっちはこんなに恥ずかしいのに…。
そうだ、イタズラでもして照れさせてみよう!
「エミリ?」
「アイル…ずっとずっと大好き!」
そうして抱きつく。
これでどうだ!
「あれ?アイル。どうしたの?もしかして私気持ち悪かった?」
「違うよ。そのサンタさんの衣装とエミリの可愛さで心臓が変な方向に動いただけだから」
「え?それは大丈夫なの?病院行った方が…」
「やだ。もっとエミリといたい」
「でも、家には莉奈ちゃんもいるし…。というか、莉奈ちゃん置いていって大丈夫だったかな」
「大丈夫だよ」
「どうしてそんなことが?」
「いや、僕がエミリを追いかけるために、家から出ようと思った時に莉奈がいてこう言ってきだんだよ『早くエミリを追いかけて!前みたいにエミリを泣かしたら今度こそ許さないから!』って」
「莉奈ちゃん…。前っていうことは莉奈ちゃんも」
「うん。記憶が戻っているね」
「やっぱりそうだったんだ」
莉奈ちゃん。ずっと私のことを見守ってくれたんだ。あったらお礼いいたいな。
「それより手繋いでいい?」
「え?急にどうして」
「だって、家に帰りたいんでしょ?だからせめて手を繋いで帰りたい」
「…うん。じゃぁ手を繋いで帰ろ」
そうして、手を繋いで私たちは歩み始めた。